春雷44

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 それに直子に関して言えば、佐々木とはそういう関係を通り越えていると良太は思っている。
「まあ、いいんです。俺、ちょっと前まで、何か焦って恋人がほしいとか思ってたけど、それこそ少し冷静になってみようかと思って。あ、でも………」
 森村が少し言葉に詰まる。
「何?」
「合コンって、行ってみたい。アメリカにはないシステム」
 ハハハと良太は笑う。
「ああ、そういえば、俺も学生ん時くらいしか。確かに日本じゃ、パーティとかそうそうやらないからな、セレブとかじゃなければ、ハロウィンとかクリスマス、かこないだみたいな誕生会くらい?」
 それを聞くと、えええ? と森村は情けない顔をした。
「わかった。確か業者さんでも合コンとかたまにやってるみたいだし、何かあったら聞いてみるよ」
「よろしく! 俺、アプリは絶対ダメなんだ。情報操作してるって最初からわかっちゃうし」
 疲れた顔一つ見せず、森村は明るく言い残して、地下鉄へと向かった。
 自分の部屋に帰った良太は猫にご飯をやったあと、しばらく猫たちがはぐはぐと食べるのを見ていた。
「お前らが食べてるの見てると、ほんと飽きないわ」
 チビもすっかり大きくなったが、二つが仲良く団子になっているのも、また微笑ましさを感じるひとときだ。
「っと、いけね。とっとと風呂入ってこよ」
 また朝になったら平造に遺体の引き取りの話を聞かなければ、と隣の部屋の方を見る。
 平造はもう寝ているのだろう、以前、軽トラで中央道を走ってきた平造に、工藤が軽トラは危ないと言ったので、今朝はワゴン車で来たようだ。
 まあ、若い頃からいろんな経験をしてきたからか、平造はかなり怖いもの知らずなので、周りがハラハラさせられることもある。
 でも元気だよな。
 そんなことを考えながら湯船にゆったりと浸かっていた良太だが、はたと思い出したことがあった。
 ペンダント!
 ちゃんと俺、ブリーフケースに仕舞ったよな?
 それから、あれやこれやで、すっかりペンダントのことを忘れて動いていた。
 さあっと血液が下降するような感覚に襲われる。
 ちゃんとブリーフケースにあるかどうか、確認しないことにはと慌てて風呂から上がると、バスローブを羽織ってペンダントがあるかどうかブリーフケースの中を見た。
「あった………」
 はああ、と大きく溜息をつく。
「どこに仕舞おう」
 と周りを見回しても、チェストの中か、デスクの小さ目の引き出ししか仕舞うところなどない。
「平さんに預かってもらうとか?」
 口にしてみたものの、平造にまたぞろ面倒ごとを押し付けることになるだけだ。
 仕方なく、もともと入れていたデスクの引き出しの奥に袱紗ごとペンダントの箱を押しやった。
 くしゃみを一つした良太は、ようやくジャージの上下に着替え、ベッドに入った。
 目を閉じようとするが、今度はピアノのチケットのことを思い出した。
 二枚はアスカと秋山に渡したが、あと一枚残っている。
 最初は良太が行こうと思っていたのだが、工藤がチケットを二枚除けておけと言ったことで、工藤が誰かと一緒にいるところなど見たくはないと、限りなくコンサートに行く気力は萎んでしまった。
 週末の金曜が十四日だから、あと中二日。
 まあ、一人でも行くって人がいたら渡そっと。
 

 翌日、平造は案の定工藤の部屋を掃除や洗濯をして、きれいに片づけをして、良太や森村、鈴木さんと昼を食べてから、軽井沢に帰っていった。
 安井と一緒に遺体に関する諸手続きは大方済ませ、お骨の入った箱を引き取ってきた平造は、相続関連は安井に任せることになったと、話していた。
 すっきりした顔をしていた。
 自分だったら、そんな縁も薄い、孫や血縁者が引き取りを拒否したような人の遺体を引き取ったりするかな、と良太は平造の心中を思いやる。
 しかも子供の時嫌な目にあわされたって言ってたのに。
 ホント、それが平さんなんだよな。
 午後は一時からNTVで、ドラマ検事六条渉シリーズの会議があるため、良太はそそくさと昼を食べ終わるとオフィスを飛び出した。
 会議は工藤不在のまま始まった。

 


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