春雷67(ラスト)

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「運動不足で筋肉も免疫力も落ちてるだろ。俺も風邪なんか引くようじゃ、少し身を入れてやらないとな」
 工藤の言葉に良太も返す言葉がない。
 この会社にもトレーニングルームがあり、良太もたまにそこにあるマシンを使ったりしていたが、最近は忙しいのを理由に無精していた。
 高輪のマンションに入っているスポーツクラブはマンションの住人はそのまま会員になっており、その家族やゲストは会員同様自由にクラブを利用できる。
 以前、良太はプールを使わせてもらったことがあるが、夜のプールはドーム型のガラス天井から眼下には夜景、見上げると月なんかも見えたりして贅沢極まりない時間だと思ったものだ。
 週一くらいでわざわざ出向くようにした方が、ちゃんとやろうという気になるかも知れないが。
「あんたは仕事し過ぎなんだよ。俺より休養が必要なのはあんたじゃないの」
 良太はブツブツと悪態をつく。
「大体、いい年なんだからな、ちょっとは考えて………」
 まだ続けようという良太の口を、「うるさいぞ」と工藤がキスで塞ぐ。
「………く……るしいってばっ! また風邪移し直すだろっ」
 執拗な口づけをようやく躱して良太は抗議する。
「元は俺の風邪だから同じだ。いいからおとなしく寝ろ」
 工藤はまたキスをする。
 あれ、ラム酒だ………
 良太は漠然とそんなことを思う。
 最近、工藤のキスから煙草の匂いが消えた。
 良太やアスカがうるさく喫煙に文句を言ったからというのもあるが、工藤にとっては、いつぞや要再検査となった時に良太に泣かれたことが何より堪えたのだ。
 良太の身体から力が抜けていく。
 工藤の腕が良太を抱き込むと、良太は目を閉じてやがて深い眠りについた。
 昨日まで荒れていた空には、細長い下弦の月が密かに東京の静寂を見下ろしていた。

 


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