翌日から登下校を一緒にする七海と勝浩の姿が人目を引いていた。
勝浩の自宅に遠回りをして、七海は彼をバイクの後ろに乗せる。
帰りも、勝浩の生徒会の仕事が終わるまで、生徒会室の外で七海はじっと待っている。
「中に入ればいいじゃないか」
志央は声をかけたが、いや、ここで、とにこりともせず、七海は即座にそれを断った。
「ナイトは大変だな」
揶揄する志央を睨みつける七海は、青い目のせいか、志央にはまるで今までとは別人のように思われた。
七海が生徒会長を振って勝浩に乗り換えたなどと、二人に関するいろいろな噂が尾ひれがついて急速に学園内に飛び交った。
その図体の大きさで転校してすぐにも人目を引いた七海は、生徒会長の志央がしばらく世話を焼いていたのも周知のことだ。
しかも以前はそれが原因でイジメを受けたことがあって隠していた青い目を、今は潔く隠そうともしないので一気に注目度を上げている。
片やどうかすると女の子より可愛いという評判さえある勝浩だ。
未遂だったとはいえ、明らかに強姦の意図を持った暴行を受けたのだが、気丈にもな勝浩は翌日からしっかり生徒会室に来ていた。
勝浩に微笑みかける七海を窓からついつい垣間見た志央は、もう、七海が自分にはあんな風に微笑むことはないのだと、あらためて思い知らされる。
噂にたがわず、いかにも仲が良さそうにバイクにタンデムする二人。
もう七海からのコールはないだろう携帯を、志央は知らず知らずぼんやり握り締めていた。
生徒会室で気を失うまで七海に殴られた男は、案の定何もしゃべろうとはしなかったが、その男がラグビー部員だということがわかった。
それにしても、堺を襲うなんて許せない!
個人的な感情を抜きにすれば彼なりの正義感故にかなり頭に血が上っていた上、自暴自棄になっていた志央は、一人でラグビー部に談判に出向いた。
ラグビー部員二人が部長に即決で退部させられた。
「申し訳ありません。これからは誓ってこんな不始末は起こしません」
そう言って頭を下げたのは、副主将で二年の桜庭幸治だった。
「今後このようなことがあった時には、部の廃止も辞さないからそのつもりでいろ」
そう念を押して、志央は部室を後にする。
「志央!」
生徒会室に戻ると、ドアの前で幸也が待っていた。
「どこに行ってた?」
「ラグビー部。談判に行ってた」
「ばかやろ! 一人で動くんじゃない!」
こともなげに言う志央に、幸也が怒鳴りつける。
「俺は手を引いてもらわなければならないような子供じゃない、生徒会長だ!」
志央は怒鳴り返す。
「敵は何をしかけてくるかわからないんだぞ!」
勝浩を明らかに強姦の意図をもって襲ってきた相手を幸也は危惧しているのだ。
幸也の好意はありがたいと志央は思う。
だが、もう、いいんだ。
俺なんか、どうにでもなれ、だ。
胸の痛みはことあるごとに志央を襲う。
バカみたいだ。
何が大事かってのは、終わってから気づくもんなんだな。
あまりにも唐突に振って沸いたから、そんな気持ちを今まで知らなかったから、ちっともわからなかった。
メガトン級のメチャクチャ本気の恋だったんだ。
超特急でやってきてあっという間に粉々。
忘れるっきゃないのにと志央は自分に言い聞かせるのだが、夢を見ていただけだと思おうとしても、全然心はいうことをきいてくれない。
弾丸を打ち込まれた痛みってこんなかな。
志央は知らず胸に手をやった。
あれから七海は変わってしまった。
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