一方、気持ちが悪くなって目を覚ました良太は、つい工藤と久しぶりなのに浮かれて飲みすぎたと後悔しつつ、何もかももどしてやっとラクになった。
「ったく、俺って、もったいないことばっかしてるよな」
自己嫌悪を引きずったまま、ちょっと汚してしまったシャツを脱ぎ捨ててシャワーを浴びた。
そんな良太の脳裏に、唐突に先ほどの男に言われた言葉が蘇る。
『能天気なツラしやがって』
思い出しただけでも腹が立つ。
「何で俺が見ず知らずの男にあんなこと言われなきゃならないんだよっ!」
だがそこではたと、ひょっとして週刊誌を見たからかもしれないと思い当たる。
「それで、ヤツは市川さんのファンなんだ、きっと」
そう結論づけてみるのだが、あの男の強い眼差しがまだ気になる。
それは自信に満ちた、地に足をつけた男の一言だったような気がするのだ。
「ああ、もう、どうせ俺は能天気なガキだよ、チクショ!」
ぶるっと頭を震わせて近くにあったバスローブを羽織る。
勝手知ったるで、キッチンの冷蔵庫を開けると、ミネラルウォーターを一本取り出して一気に半分ほどを飲み干した良太は、そっとベッドに歩み寄った。
途端、いきなり伸びてきた腕に掴まれて、良太はベッドにひっくり返る。
「何だよ、疲れてるかとそっとしておこうと思ったのに」
「お前が起きたんで目が覚めたんだ」
いいながら良太のバスローブをはだける工藤の手を、良太は掴む。
「疲れてんじゃないのかよ……」
「それとこれとは話が別だろ?」
間近で息を吹きかけられると、「酒臭い……」とは言ってみるものの、既に上ずっている。
「やりたくないわけ、ないだろうが」
耳元で囁かれて、良太の体温は一気に上がる。
口より正直な良太の身体は、勝手に工藤を求めて月あかりの下で紅く染まっていく。
「有吉って……」
工藤に散々翻弄された身体は力が入らずに、口を動かすのも億劫だったが、ふいに思い当たった良太が呟いた。
「ひょっとして、髭面のでかい、ブーツはいてたヤツ?」
「何だ、お前知ってるのか?」
思ったとおりの工藤の答えに、良太は漠然と前途多難な道を思い描いてまた目を閉じた。
「眠い……」
とにかく今は眠りたい。
この男の温かい腕の中で。
良太は身体をまるめて、工藤に擦り寄った。
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