まあ、工藤がブランドもんなんか似合ってるなんてのは、今に始まったことじゃないし。
沢山のモデルやタレントがいたが、このダークグレイのスーツは工藤が一番似合って見えたとか。
年輪と渋みを重ねた分、きっとこの隣に座る男の魅力になっているんだろう、なんて思ったことは、良太は絶対口にはしないが。
身びいきって言うか、やっぱ俺の頭腐ってるって。
「お銚子、もう一本お願いします」
考えるだけでカーッと赤くなった顔をごまかすように、良太は言った。
「おい、大丈夫か?」
工藤は足元がおぼつかない良太を抱えて聞いた。
「全然、平気ですって。そういや前田さんとこも最近、行ってないじゃないっすか、ちょと寄りましょうよ」
「しょうがないやつだな」
良太が自分と酒を飲むのを嬉しがっているのはよくわかるのだが。
会社に戻る途中にあるバー『OLDMAN』へ降りる階段も危なっかしくて、工藤は良太の腕を掴んでいた。
「あ、俺も同じの、ロックで」
「おい、カクテルかなんかにしてもらえ」
「ダ~イジョブれすって」
工藤はカウンターの中の前田に目で合図し、ジンジャエールで割ったものを良太の前においてもらう。
コクコクっと二口ほどのんだところで、良太はカウンターにつっぷして寝息をたてている。
よくやってるよ、お前は。
最近の良太のことを思い、工藤は良太の寝顔に心の中で語りかけた。
だが、古谷の話はもういい加減にしてくれ。
実のところ他の男のことを良太がやたら褒めちぎるのを聞いているのは面白くない。
一杯を空にすると、工藤は千鳥足の良太を担いで店を出た。
「こら、しっかり歩け」
「へーい……」
さすがに良太を部屋まで連れて行くのは、つぶれたひとみを抱き上げて運ぶより骨が折れる。
エレベーターで七階にあがると、猫たちが寝ているだろう良太の部屋ではなく、隣の自分の部屋に連れて行く。
「トイレ……」
部屋にあがるなり、のたのたと歩いていく良太に、「おい、大丈夫か」と心配になって工藤は声をかける。
水音がしてトイレのドアが開くと、良太は出てきたのだが、その場でバタンと気を失った。
青白い月の光線がカーテンの隙間から落ちている。
どのくらい時間が経ったのか、夜明けにはまだ遠いようだ。
うとうとしていたらしい。
隣に寝ていた良太が動く気配で工藤は目を覚ました。
床に倒れこんだ良太の服を脱がせて、ベッドまで運んだが、爆睡しているようで、工藤がシャワーを浴びてから横にもぐりこんでもぴくりともしなかった。
疲れもたまっていたのだろう。
古谷古谷と連呼されるのはいただけないが、良太と一緒に仕事をするのは工藤としても悪くない。
あとは、有吉か。
工藤は気になっている男の名前を思い浮かべた。
どうも、写真週刊誌の良太と市川を写したショットが以前にみた有吉の報道写真と重なってみえて、工藤は消化不良気味なのが嫌だった。
良太はシャワーを使っているらしい。
音が聞こえなければまた風呂から引きずり出さなければならないかと思っていた工藤は、やれやれ、と思う。
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