下柳と葛西の熱弁に、たまに口を挟む工藤とほんのたまーにボソッと的を得た言葉を口にするのが有吉だ。
もともと彫りの深い顔立ちは日焼けて無精ひげも手伝い、日本人と言われなければわからない。
精悍な鋭い目つきはそれだけで何者かと周りのものを振り返らせる。
そりゃ、そんなワールドワイドワイルドな男からみたら、俺なんか能天気な面下げてるだろうさ。
つい、そんな言葉を心の中で有吉にぶつけながら、良太は打ち合わせの内容をメモり、頭の中で良太なりにシュミレーションさせていく。
「で? 広瀬プロデューサー殿には何かご意見はないのかな?」
ニヤリと笑う、口数の少ない有吉の言動のひとつがこれだ。
「視聴者に自然の本当の声を伝えるためには、予定されている三人のナビゲーターの方々にも、どこかで生の実態を見ていただくことが必要だと思っています」
良太も咄嗟に正直なところを口にする。
「これだからド素人はな。これから行くところは俺らでも危険を承知で乗り込むようなとこだ。んなジャングルの奥地なんかへ、タレントなんか連れて行けるか。何とか探検隊とかってな、でっちあげとはわけが違うんだぜ」
「例え究極の未開地域に行くのは無理だとしても、ある程度の片鱗は自分の目で見ないとナビゲーターの意味がないと思いますが」
ちょっとムキになって良太も言い返す。
「ほう? タレント連れて行くとなれば、セキュリティの確保ってだけじゃない、そいつらを守る俺らにも危険が倍増するってこった。それだけ金もかかる。それだけのものを捻出できるってことかな?」
「もちろん、それは調達します」
ついまた大口叩いてしまったと、思っても後の祭りだ。
有吉と良太のやり取りを下柳や葛西はニヤニヤしながら眺めていたが、「よく言った! さすが、良太ちゃんだ」と下柳に言われ、あらためて良太は事の重大さに心の中で冷や汗を流す。
やっぱり資金が調達できませんでしたでは済まされない。
当然工藤の手を借りるようなマネは金輪際したくもない。
「時間だぞ」
やる気がふつふつと湧き上がったところで、工藤の声に、良太ははたと会見時間が迫っていることに気づいて飛び上がった。
「すみません、お先に失礼します!」
急ぎ足で控え室に向かう良太の後姿に目をやって下柳は苦笑する。
「有吉、そう良太ちゃんをいじめんなよな」
「何の、お手並み拝見しよーじゃねーか」
有吉はフンとせせら笑う。
「ムキになって突っ走るだけだから、その辺でやめとけ」
ボソッと口にした工藤を、有吉は珍しいものを見るような顔で眺めた。
案の定、主演の志村や多喜川誠への質問の後、ゲスト出演の芽久には工藤との関係はどうのという質問もぶつけられたが、芽久はそれらをにっこり笑って無視し、とりあえず記者団を煽ったり反感を買うような受け答えをすることもなく、つつがなく記者会見は終わった。
有吉たちとの打ち合わせも終わったらしく、袖に立つ良太の後ろにいつの間にか工藤が来ていた。
会見が終わり、会場を出るや、芽久は工藤を見つけてしがみつくように傍を離れないでいる。
back next top Novels
にほんブログ村
いつもありがとうございます
