夏霞13

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 今回そのデータを沢村本人にも確認してもらうために、このパソコンに動画を入れてきていた。
 佐々木はデータを見始めるといつのまにか夢中になっていて、ハッと気づいて慌てて風呂の湯を止めに立った。
 戻ってきてまたパソコンの前に座ると、沢村のジョギングシーンは小雨が降る朝に変わっていた。
 ウエアは雨でも弾く素材だが、顔のあたりは汗と雨に濡れ、髪の落ち加減や雨粒がきれいで、さらに顔にかかる雨や髪が邪魔なのだろう、首を振って弾き落とすそんなシーンが非常に目を引く。
 こんな風に画像や動画で沢村の頭のてっぺんから足の先までを見ていると、やはり沢村の身体のバランスがいいことは明白だ。
 上着を脱いでTシャツに短パンのシーンでは、筋肉がひどくきれいについており、百九十センチを超す体格に見合っている。
 ボディビルダーのような誇張されたものではなく、上半身の筋肉の付き方もまるで解剖学の人体模型のように模範的で、腰の位置が高く長い脚にもがっちり筋肉がついている。
 腰や尻のあたりがしっかりしているのも、スラッガーならではのものなのだろう。
 顔の端正さからいっても、純粋な日本人というより、遥か祖先には南の方の人種が入っていた可能性はある。
 恋人と知っている藤堂になどそんなことを言えば、惚気かと言われそうだが、ジョギングの動きもとてもきれいで、確かに映像にしたい人間だと、佐々木は改めて思う。
 CMの出来上がりを想像しても非常にいいものになるに違いないと確信している。
 ただ一つだけ、佐々木の中には不安要素があった。
 メディア嫌いで知られる沢村に何度も話を持ち掛けてきたアディノの広報課長小菅は、佐々木も打ち合わせで数回会っているが、かなりの野球ファンでなおかつ関西人でもあり、かなりの関西タイガースファンで、さらにかなりな沢村ファンらしい。
 あまりに何度も懇願してくる小菅に対して、面倒くさくなった沢村がプラグインが制作するなら受けるなどと、既に広告代理店英報堂にオファーがなされていたところへ無理難題を言い放ったのだ。

 


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