この部屋だけ藤堂さんらよりえらい上にある思たわ。
っていうか、沢村呼んでもええように考えてくれはったんか、藤堂さん。
っていうか、スイートやて?
佐々木が頭の中でああだこうだ考えているうちに、ディナーは整ったようだ。
「どうもおおきに」
佐々木は言った。
「何か御用がございましたら、何なりとお申し付けくださいませ、マダム」
バトラー風スタッフは礼儀正しくお辞儀をすると部屋を出て行った。
ドアが閉まってから、はたと佐々木はスタッフの言葉を反芻した。
「待て待て待て! なんでマダムやねん!? Tシャツ着とろうが! ドアホ!」
佐々木はつい声高に喚かないではいられなかった。
「何、怒ってんの?」
戻ってきた沢村が脱いだ上着をソファに放った。
「ホテルマンが、俺に、マダムとかいいよってからに! 俺、言葉も交わしたで? 上着着ててもTシャツで胸ないし、首のあたり見たら男やてわかるやろ?」
憤慨する佐々木を沢村は笑いながら、早速テーブルについた。
「せっかくのシャンパン、飲もうよ」
沢村は向かいにセッティングしてあるグラスに、シャンパンを注ぎ、自分のグラスもきれいな淡いゴールドの液体で満たす。
「ヴーヴクリコだ。藤堂さんからサヨナラホームラン祝いだってさ」
「え? そうなん?」
「乾杯!」
「せや、サヨナラに?」
「サヨナラじゃなくて、サヨナラホームランにだ!」
ムキになって訂正する沢村を見て、佐々木は笑う。
グラスを合わせてようやく肩の力を抜くと、佐々木もグラスを口に運んだ。
ヴーヴクリコて、また高級シャンパンを。
ていうか、そういうんしか、知らんのかも。
ハードチーズがまた美味い。
「この部屋俺らにとってくれたみたいだぜ? 藤堂さん」
本当に腹がすいていたのだろう、沢村はまるで何日も食べていなかったかのようにガツガツと片っ端から平らげていく。
「え……」
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