ドライヤーでざっと髪を乾かすと、佐々木はクローゼットのバッグからTシャツや下着を取り出した。
沢村はしっかり身だしなみを整え、コーヒーを飲んでいる。
「シャワー浴びる前に、洗濯特急で出したら、すぐにやってくれたぜ。佐々木さんのTシャツとか、ジャケットとかパンツとかも」
「おおきに」
そっけなくも礼を言い、佐々木は沢村に背を向けてベッドに座り、バスローブを脱いでTシャツと下着をつけた。
それからクリーニングされたパンツをはき、ジャケットを羽織る。
じっと鏡の中を覗く佐々木に、「あ、全然、見えないから大丈夫」と沢村が言う。
「何がや?」
ちょっと強めのいささか非難めいた疑問形には答えず、「コーヒー、飲むだろ?」と沢村はテーブルの上に用意されたコーヒーポットからカップにコーヒーを注ぐ。
「お前、夕べのバトラーに顔合わせたんか?」
気だるい身体に鞭打って、佐々木は椅子に腰を降ろした。
「別に平気だろ?」
こいつは、自分が有名人やいうことを知らないわけやないよな?
寝乱れたベッドをチラッと見やった佐々木は眉を顰める。
「九時にダイニングに集合だろ?」
沢村はできる限り軽い口調で聞いた。
一応、昨夜今日のスケジュールを確認した時に、藤堂らと朝食ミーティングだと聞かされていた。
「ああ」
九時までに頭、浮上するやろか。
佐々木は頬杖をついてぼんやりと窓の向こうに広がる、今日も暑そうな朝の大阪の街に目をやった。
沢村には大阪の街も暑さも、どうでもよかった。
目の前の佐々木しか目に入っていないのだ。
気だるげな佐々木さん、すげ、色っぺ……とかって言ったら、怒るよな。
マスコミが嫌いで、何か言うといちゃもん付けられるのが関の山だったので、なるべく口数少なく黙っていたら勝手に寡黙でクールな男キャラにされてしまったが、その男の今の頭の中は、その程度だ。
それを知る者は数少ないが。
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