実際、佐々木としても、言えるものなら「仕事なんかしたくない」とでも言いたいほどだ。
もっと一緒にいたいと思うのは佐々木も同じだった。
逢ったのは二週間ぶりだ。
いずれにせよ次に逢えるのは、沢村のスケジュール次第だ。
佐々木の言葉に沢村はむすっとしたまま、エンジンをかけると、動き始めた藤堂の車を追った。
「しかし、今日の沢村くんは、我儘王子全開だね」
赤信号で停まり、後ろの車を確認した藤堂がぽつりと言った。
「あれがあいつの本性です」
「懐かないと本性を出さないわけか」
「ガキの頃から知ってるやつは知ってますって。マスコミに追いかけられて面倒くさいから無視するようになって、寡黙とか大きな誤解が生まれただけで」
ナビシートの良太は、それこそムキになって訴えた。
「まあ、佐々木さんは沢村くんにとっては実際、とてもいい存在になってるよね」
「はあ、沢村にとっては、デキ過ぎな相手ですよね~。俺、最初聞いた時、信じられなかったですよ。何でって、あの佐々木さんが」
沢村が佐々木のことを初めて人に打ち明けたのは良太だった。
相手にしてもらえないと飲んだくれていた沢村は、佐々木のことを本気なのだと思ったのだが、佐々木が本気になってくれるかどうかはその時点では、良太にはわからなかったし、あの佐々木ではごめんなさいだろうとも思ったのだ。
それが蓋を開けてみれば、カップル成立、いったいどうなってるんだ、と良太にも不思議だった。
「まあ、それが恋っていうものの不可思議なところだろうね」
「はあ……まあ」
確かに、この仕事が決まった時、佐々木のようすから、沢村が思っている以上に佐々木も沢村のことを好きなのではと思ったのだ。
「それに、今朝の二人、何か新婚さんみたいだったよね」
藤堂は笑う。
「はあ?」
良太は首を傾げた。
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