「俺、新婚さんとかわかりませんけど、もっと仲いいもんじゃ……」
「微妙にわかっちゃうんだよな、これが。幸せオーラがみえて」
「藤堂さん、楽しそうですね」
藤堂はくすくす笑った。
「いやさ、沢村くんが佐々木さんに会えるんで、サヨナラホームランだったみたいに、佐々木さんも、沢村くんを被写体にして仕事をするんだから、そりゃすごいのができるよって話」
「はあ、まあ、佐々木さんは、仕事ではずすことはなさそうですけど」
しかし、まさしく藤堂の言った通り、佐々木の仕事ぶりはいつもよりクールでこれというまで何度でも撮り続けたが、沢村の沢村たるものを最大限に引き出した感があった。
グリーンバックでフルスイングする沢村は迫力が違ったし、その表情も的確に捉えていた。
スタッフの口からも、「すげぇスイング」「衝撃的! さすが沢村」「プロだわ」という声がそこここで聞かれ、圧倒的な躍動感の中、彼らの熱量も上がったらしい。
アディノの広報課長小菅は、最初から、すばらしい、を連発している。
小菅の部下の太田は髪を後ろできっちりまとめた真面目そうな若い社員だが、沢村がスイングを始めると、拳を握りしめて、「すごい、素敵! なんてパワフル!」と目を輝かせている。
「何か、佐々木さん、ヤギさんばりにきついです、今日」
おおかた二時間ほど経ってから、良太がこそっと藤堂に耳打ちした。
「いつも以上に、力入ってんな。まあ、沢村くんも佐々木さんに言い仕事させたい一心で、文句ひとつ言わないし」
「それ! いつものあいつからはマジあり得ないっすよ」
藤堂は頷いた。
「でも、ちょっと小菅課長の佐々木さんへの視線が時々気になるんですよね」
それを聞いた藤堂は、また頷いて、「俺もちょっとね」と気づいていたようだ。
何しろ、根っからの野球ファンで、関西タイガースファンで、沢村のファンという小菅課長の熱心な意向でこのプロジェクトが発足したのだが、代理店がプラグインに決まり、担当の藤堂が無論佐々木に声をかけたところ、佐々木も当然首を縦に振った。
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