夏霞31

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 そして沢村が無茶ぶりで良太を代理人にしたため、藤堂、佐々木とともに良太がこの小菅課長との打ち合わせに出向いた日。
「いやあ、それにしても男性でもおきれいな方がいらっしゃるもんですねぇ」と臆面もなく無遠慮に佐々木に秋波を飛ばしていた小菅に眉を顰めざるを得なかった。
 注意はしていたものの、この日も満を持しての沢村の登場に感無量のようだったのはよしとしても、佐々木との握手がやけに熱っぽかったのをはじめ、佐々木に向けられる舐めるような目つきを良太は心配していた。
 もしそんな小菅のようすを沢村が知ったらと気が気ではない。
 ヤバイことにならなければいいと思いつつ、今のところ、佐々木も沢村も撮影に集中しているので、小菅のことなど念頭にないらしいのだけは救いだった。
 良太は後ろで撮影を見ていたが、佐々木も沢村も非常に真面目に丁寧に取り組んでいる。
 藤堂は二人に任せていて、たまにデータを確認している程度だ。
 昼休憩は藤堂が用意した藤堂家御用達の料亭から松花堂弁当が届き、小菅や太田はもちろん制作スタッフにも振舞われた。
「あの角度がちょっと気になる。あれだと天井にぶつかっちまう気がするし」
「ほな、またアングル変えてやってみまひょか」
「わかりました」
 弁当の最中もそんな調子の二人にディレクターが真剣に答える。
 藤堂と良太は思わず顔を見合わせる。
「良太ちゃんからは何か意見はないの?」
 藤堂がいきなり振ると、佐々木や沢村も良太の方を見た。
「俺ですか? うーん、俺としては文句なしって感じですけど、しいて言えば、もちょい沢村らしさをこうバーンとアップってなカットもあってもいいかとか」
「沢村くんらしさ? 笑顔とか?」
「まさか、沢村のキャラじゃないし」
 即否定した良太に、「何だと?」と沢村が睨み付ける。
「いや、どっちかっていうと、眉寄せて睨み付ける的な? 俺がやらずに誰がやる的な?」
「てめ、喧嘩売ってんのか?」
 沢村が苦々し気に抗議する。

 


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