夏霞3

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 プラグインの藤堂と佐々木、それに良太は、つい最近もこのメンツで東洋商事のCM制作にあたっていた。
 同時進行で、アディノのCM制作にもとりかかっていた。
 撮影をするまでの準備は万端整い、秋の放送に向け、オールスターゲームの前日に沢村の貴重な時間を利用しての撮影となったのだ。
 明日が神戸のホーム球場でのゲームになっており、一日おいて、オールスター初日は大阪ドームで行われることになっている。
 その一日を使って、大阪のスタジオで、スイングをしているカットを撮影する予定である。
 既にアディノのウエアを着けてのジョギングシーンは、これまで東京にいる時にトレーニング中の沢村を追って撮影をしてきている。
 スイングのカットは、沢村がスタジオに出向くと申し出たため、佐々木らのスケジュールも加味したところ、結局大阪での撮影となったのだ。
「佐々木ちゃん、炎天下歩くことになったら帽子は必須だよ。野球のキャップもいいけど、炎天下はチューリップハットとかのがいいかもよ?」
 日焼けを心配して直子は妥当な意見を言ってくれる。
「そうやね。ま、スタジオに入れば、炎天下もない思うけど」
 嬉しくないわけがない、とはあまり表に出さないようにしている。
 逢いたい逢いたいと言って電話してくる沢村を結構邪険にしている佐々木だが、その実、逢いたいと思っている自分がどうしようもない。
 つきあい始めて半年以上が過ぎた。
 関西タイガースが在京チームとのゲームの場合は、沢村は東京で定宿にしているホテルに滞在し、日曜の夜会って沢村の部屋に行くことが多い。
 つきあい始めた当初は、沢村もシーズンオフだったため、土日を使って箱根にある沢村の別荘へ行って過ごしていたが、ちょっと箱根は時間がかかるし、沢村は少しでも佐々木との時間を潰したくなかったのだ。
 佐々木が税金対策で、放置していた自宅の雑木林になっている土地の半分を売ることにした時、佐々木のその話を聞いて、即不動産屋に連絡を入れてその土地を沢村が買ってしまったことに対して、佐々木が怒ったのは、あやふやな自分たちの関係がいつまでも続くとは思えないという思いからの戸惑いが原因だった。

 


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