佐々木の戸惑いに気づいたかのように、佐々木の携帯に良太からのラインが届いた。
『沢村にもラインしておきますが、明日は九時にホテルを出るので、それまでに佐々木さんを送らせて下さい』
「荷物ホテルやしなあ」
佐々木はまだ迷いながらぽつりと言った。
「シャツなんか俺の着てればいい」
「でかすぎる」
「大は小を兼ねる」
すると佐々木は思わず笑う。
「神戸の祖父というかもう伯父の世代だけど、別荘があって、それをこっちでは借りて使ってる。誰も最近使わないらしいし。山の上だから見晴らしはいい」
「へえ」
ふと、佐々木はこちらでの沢村の住居を見てみたいと思った。
当たり前の話だが、東京に宿があるように、球団所在地であるこの街にも住まいがあるわけで、今まで思いつかなかったのが不思議なくらいなのだが、沢村はこちらで、一人の夜を過ごしているのだろうかと。
信じていたというより、沢村が佐々木に夢中な様子を見せているから、考えてもみなかったというのが本当のところだ。
これまでも遠征先などに一緒にこないかと沢村から誘われたこともあったが、佐々木はとにかくシーズンが終わるまではダメだと頑なに拒否し続けている。
それはあくまでも沢村のために言っていることなのだが、二週間、三週間と逢えない日が続く。
そんな時、誰か夜の相手など、いないのだろうか。
唐突に心の錘が沈んでいく。
逢った時の沢村の飢えたような性急さからもその可能性を考えない方がおかしいのかもしれない。
恋人ではないのかもしれないが、若くて力が有り余っているような沢村のことだ、いない方がおかしいのかもしれない。
そんなの、俺が拒んでるんやから、しゃあないよな。
心の中で呟いた途端、佐々木の胸がひどく軋んだ。
リアルな痛みを感じて、佐々木は固唾を飲む。
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