夏霞37

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 今はこないして沢村と一緒にいられるんやからええか、なんて。
「よかった、俺、また何かやって、佐々木さん怒らせたかと思ってた。勝手にここにつれてきたり」
「何やそれ……、俺、いつも怒っとるみたいやろ」
 何やこいつ、それで俺の機嫌を窺うみたいな顔してたんかいな。
 天下の関西タイガース四番沢村が情けない。
「せや、さっき、良太ちゃんが言うたやろ? お前らしさが欲しいて」
「ああ」
「盲点やった、俺としたことが。ようお前のこと知っとるな、て。お陰で視点変えたカットも撮れたし。俺がやらずに誰がやる的なやつ?」
「良太のやろ、勝手なこと言いやがって」
 沢村はむすっとした顔で、冷酒を空のグラスに注ぐ。
「ええやん、ダイレクトに言うてくれるとか、有難いわ。いや、良太ちゃんと仕事してるとさすが、工藤さんの秘蔵っ子や思うことがままあるんや」
 すると沢村は佐々木をじっと見つめた。
「クソ、良太はちゃんと佐々木さんに認められてるってことかよ。負けてらんねぇ」
 佐々木は笑った。
「ええライバルやんか」
 確かに、良太とはそれこそ敵対心丸出しでやり合ってきた。
 だがそれは沢村にとってそれだけの相手だと認めざるを得ないものがあったからだ。
 一浪したものの、学費が安いところしかダメだと言われて良太がT大に入った時も、やるな、と思ったし、家の負債のために工藤にいいようにこき使われていると思ったこともあったが、実際、しっかり仕事を任されているのだと、京都のロケで逢った時、再認識したのだ。
「まあ……そうかな」
 佐々木は微笑んだが、ただ少しだけジェラシーもないこともなかった。
 それだけ沢村にとって大切な友達だということだ。
 しかも、佐々木に会う前に沢村が好きだったのは良太なのだ。

 


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