わざとそんな言い方をする佐々木に、沢村は少し悲しくなる。
たった六年じゃないかよ、第一、あの人、俺よか若い感じだろうが。
俺だって、小学生のガキからすれば、おっちゃんなんだし。
時折、佐々木が沢村との付き合いで気にしているこもごものことを丸めてゴミ箱に捨ててしまいたくなるのだが。
風呂の蛇口を捻る佐々木を見やり、バスルームを出た沢村は、鮨の器を玄関の外に出し、使った皿やグラスをキッチンに持って行くと食洗機に入れ、空いた酒瓶やごみを分別してゴミ箱に入れた。
「夏だし、冷たいのがいいよな、佐々木さん」
ワインを冷やしておこうとワインセラーを開けて渋みのない赤と白を選んで取り出した。
このワインセラーは祖父の物で、結構値段の張るものや熟成されたワインが入っている。
ここを使う者なら誰でも飲んでいいことになっている。
智弘、ここ出る頃にはきっとワインなくなっちゃってるね、などと従姉にからかわれたが、かなりの本数があるし、なくなったらまた足しておけばいいと思っている。
「ほんとに寝ちゃったんじゃないよな?」
気になってワインクーラーとグラスを抱えて二階に上がり、バスルームのようすを窺った。
ドライヤーの音がするので、上がったらしいことがわかり、沢村は寝室にワインを持って行った。
「俺、ざっと入ってくるから、先に飲んでていいよ」
佐々木がバスルームから出てくると、沢村はそう言って寝室を出た。
造りが似ているこの家は沢村と出会った頃、佐々木を連れて行った箱根のことを思い出させる。
あの頃はこんなに長く付き合いが続くとは思ってもみなかったのに。
こんなに、沢村で一杯になってしまうなんて。
佐々木はソファに腰を降ろすと、喉が渇いたので、ワインと一緒に置いてあった炭酸入りのミネラルウォーターを飲んだ。
バスルームの続きのように一面ガラス張りの外は、灯りの渦まく街が眼下に見下ろせる。
「贅沢な夏やな………」
ぽつりと佐々木は呟いた。
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