「良太に言っとかなけりゃ。藤堂の耳にも入れといてもらえば、あの人も気を付けてくれるはずだ」
以前、沢村が佐々木を追いかけてプラグインまで押しかけた時に、藤堂は言ったのだ。
「佐々木さんは大事な友人だからね。どんな人間であれ、彼を傷つけるようなマネはさせたくない」
藤堂はあたりがよく、一見チャラそうに見えるが、どうして肝が据わった男だと、沢村は認識している。
今回の沢村と佐々木への対応といい、仕事さえきっちりやるのであれば、理解ある大人の面も持ち合わせている。
自分のことを認識不足なのは佐々木自身だ。
あの植山の一件は未だに沢村にとって腸が煮えくり返るような事件だったが、まさか佐々木も植山があんな手段に出るとは思いもよらなかったのだろう。
だが、下手をすると関わった者にそんな暴走をさせてしまうような、佐々木にはそんな危ういオーラが取り巻いているのだ。
だが、植山が危険だから近づくなとか、佐々木に面と向かって言ったものなら、一発で機嫌を損ねることは間違いない。
そんなひ弱な存在ではないと怒るだろうことは目に見えている。
だが実際のところ、沢村自身も佐々木のその危ういオーラに暴走させられた一人だったのだと改めて思う。
いくら何でも初めて会ったその夜に、そこまで入れ込んで夢中になってしまうとは、沢村とて思いもよらなかったのだ。
囚われればもう追い縋ってしまう。
佐々木が朝になっていつの間にか出て行ったと知った時、沢村はなりふり構わず必死になって佐々木を追っていた。
何と良太が佐々木に導いてくれるとは、三十年近く生きてきてこれ程ラッキーだと思ったことはなかった。
絶対離したくない。
逢えば逢うほど好きになる。
離しがたくなる。
さっき湯上りの佐々木の身体からオリエンタルな香りと佐々木の匂いが一緒になって、沢村の鼻孔をくすぐった時は、思わずそのまま押し倒してしまうところだった。
無意識にそうやって誘ってるとか、あの人は全然わかっちゃいない!
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