パクパクとオムレツを口に運びながら、沢村は眉を寄せる。
「せやな、俺もそういうんは好かん」
「まあ、その市川ってアナウンサー、良太とはスポーツ関連で話が合うらしくて、たまに一緒に取材してるらしい。良太の大学の後輩になるのか? 可愛いタイプだが、取材ではきっちり真面目に聞いてくるから、そういうのには一応答えてるよ」
局アナと選手はそういうところで顔を合わせるんだと、直子が話していたのを佐々木は改めて思いだした。
沢村が昔付き合っていたというのも局アナだったようだ。
接点があると言えばやはり取材だろう。
キー局だけではない、地元テレビやラジオ局の取材もあるはずだ。
何だか夕べから、沢村の女、というキーワードが佐々木の頭から離れない。
沢村の背後にいる顔のわからない亡霊のごとき存在に対して、嫉妬の渦が消えてくれない。
明らかにいるともわからないというのに。
俺て、そないヤキモチ妬きやったっけな。
自分でも呆れるくらいだ。
けれど、これだけ血気盛んな、パワフルな男が、とても佐々木一人で足りているとは考えにくい。
しかもいつも会えているわけではないのだ。
しかも試合の邪魔をしたくないからと、佐々木は遠征先になど行ったこともない。
どころか、まだ沢村の試合すらグラウンドで見たことがないのだ。
万が一にでもそれこそマスコミにでも二人のことが知られたらと考えるとそれが怖い。
今は藤堂や良太もいたので、仕事にかこつけてこうして公の場で食事をしているのだが。
現に今も、関西タイガースの沢村だと気づいたのだろう、こちらを見ている視線がちらほらある。
無論、二人で食事をしているからと言って、すべからく勘繰られるというわけではないのだが。
駐車場でキスしたりと、沢村の大胆さには、時折腹立たしくもなる。
だが、本音をいえば、仕事なんか放りだして、このまま沢村と一緒にいたい。
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