夏霞46

back  next  top  Novels


 沢村が席に戻ると、佐々木はぼんやりと頬杖をついていた。
「パワスポもオールスターに取材に来るんで、俺はあんまし喋るの嫌だって言ったんだが」
 沢村は良太を外に連れ出した言い訳をした。
 それは事実だったので、変にきょどったりはしなかったものの、心の中はアディノの小菅のことを思い出してカッカきていた。
「パワスポ、良太ちゃん頑張ってるもんな」
「あいつはこないんだが、市川って局アナが来るらしくて」
 その時、二人がオーダーした朝食が運ばれた。
 佐々木はフルーツヨーグルトとグラノーラ、それにクロワッサンが並ぶ。
 沢村の前には、ベーコン、ソーセージ、トマトにマッシュポテト、プレーンオムレツとトーストとフルーツヨーグルトと朝からきっちりとした食事だ。
「いつもは食事、どうしてるんや?」
 佐々木は気になっていたことを聞いた。
「ああ、こっちでもやっぱ、トレーナーんとこの専属栄養士から、従姉が紹介してくれたハウスキーパーにメニューを渡して、朝晩は作っておいてもらう。朝は冷蔵庫から出してチンするだけ?」
「え、じゃ、夕べとか今朝の分は?」
「冷凍してあるから、昼とか、食う時もあるし」
 こういうところは沢村は鷹揚で細かいことを気にしない。
 それはスイングにも共通するものがあると、佐々木は思う。
 初めて目の前で沢村のスイングを見たが、極めた技術、プロというものの凄さを知らされた気がした。
「まあ、パワスポくらいはちゃんと答えてやったらええやんか。マスコミには取材しづらいて言われてるみたいやけど」
「ああ、まあ、そう、その市川って局アナ、知ってる? 前に写真週刊誌に良太と載ったことあるんだぜ?」
 フッと笑って、「あんときの良太、焦りまくってたな」と沢村は付け加えた。
「週刊誌に? 良太ちゃんが?」
「そうそう、あれさ、ほんとは局の前あたりで、大勢一緒だったのをパパラッチがいかにも二人きりですみたいに撮りやがって。だから嫌いなんだ、マスコミは」

 


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
いつもありがとうございます