駐車場に出ると、藤堂と良太の姿がすぐ目に入った。
沢村はついつい、クソっと口にする。
もう一回抱きしめたかったのに。
「沢村、でかいの一発、期待してるぞ!」
威勢よく良太が沢村にはっぱをかけてくる。
「るせぇな、わかったよ!」
「市川さん、インタビュー行くから頼むわ」
「んなもん、タコだったって知らねぇからな」
そんなやり取りをよそに、藤堂は、「助手席とどっちがいい?」と佐々木に聞いた。
「ほな、後ろで」
おそらく疲れがどっと出そうな気がして、佐々木は後ろに乗り込んだ。
沢村が持っていた佐々木のバッグをトランクに入れた。
「CM、いいものになると思うよ。楽しみにしてて」
藤堂は沢村にそう声をかけた。
「ええ。気を付けて」
「イエッサー!」
藤堂は景気よく返事をして、運転席に乗り込んだ。
「んじゃ、期待してるぜ、バックスクリーン!」
そんな良太の科白を最後に、パワーウインドウが閉まると、やがて車は駐車場を出て行った。
佐々木は少し沢村を見たが、何も言わなかった。
「ちぇ、行っちまったぜ」
ぽつりと呟くと、しばし車の後を見送っていた沢村は自分の車へと取って返した。
「そう言えば市川さんって、例の写真週刊誌の彼女?」
赤信号で停まると、藤堂が思い出したように良太に尋ねた。
「そうですよ。全く、あれ、まるで二人きりみたくレイアウトされてるけど、実際は周りに局のスタッフ何人もいたんですから。しかもあれ、局の前ですから」
藤堂は笑った。
「うまいこと載せるからな、売るために」
「ほんとですよ! しかもここだけの話、あれ撮ったの、実は有吉さんなんですよ」
「え? レッドデータアニマルの?」
これは藤堂も意外だったようだ。
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