「佐々木さん」
どこかからか佐々木を呼ぶ声が聞こえた。
「佐々木さん」
目を開けると、良太がのぞき込んでいた。
「すみません、お休みのところ。今、浜松のサービスエリアなんですが、ちょっと休憩しようかと」
ようやく良太の言葉を理解すると、「えろ、寝入ってしもて」と言いながら、佐々木はシートベルトを外した。
「親子丼美味そう! タンタンメンもいいな」
フードコートで、良太は目移りするばかりだ。
結局美味そうに食べている人を見て、三人とも親子丼を食べることにした。
「これ、うっまあ!」
良太は一口食べて声を上げた。
「なかなかいけるな」
藤堂も頷きながら箸を動かす。
そんな二人をよそに、佐々木はあまり箸が進まない。
「夏バテ気味かな?」
藤堂が心配そうに佐々木を見た。
「ああいや、俺、爆睡してもうたし、たいして身体動かしてないから」
「夕方、那須へ発つんだったね。まあ、食べられるだけ食べて、あとは寝て行ったらいい」
藤堂の言葉は優しい。
しかもただの慰めなどではなく、状況を把握した上で的確なアドバイスをくれる、良太の言うように、ちょっと見ではわからない切れ者という気がする。
「おおきに。けどちょっと寝過ぎやから、運転かわりましょか?」
「ああ、気にしないで大丈夫。ここで充分休んだからね。佐々木さんは風景でも楽しんで行ってよ」
確かに藤堂の運転は安心安全で、乗せてもらっている方はリラックスできる。
「俺、お土産見てこよ」
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