夏霞54

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 食べ終えた良太が立ち上がると、佐々木も半分ほど残してしまったが、「あ、俺も、見よかな」と後に続いた。
 藤堂はそんな二人を見ながら、ゆっくりとお茶を飲んだ。
「ホテルの近くでも買ったんだけど、鈴木さんに、カヌレってお菓子、うまそうなヤツ」
 並んでいる浜松あたりの名物を見ながら良太が言った。
「うっかりしてもた。直ちゃんに、大阪のお土産買うてくつもりやったのに」
 出がけまで沢村がぴったりくっついていて、そんな余裕がなかったと言えばそうなのだが、佐々木自身、土産のことも忘れるくらい頭の中が沢村のことで一杯だった。
「あ、だったら、たくさん買ったから、佐々木さん、持って行ってよ」
 いつの間にか後ろに来ていた藤堂が口を挟んだ。
「ええんですか?」
 佐々木は振り返る。
「いつも美味しいものはたくさん買っちゃうんだよ。あれはぜひ直ちゃんにあげたいしね」
「おおきに」
 それは佐々木にとって非常に有難い申し出だった。
「うなぎパイは必須だよね。おや、この和菓子もきれいだね、お、こっちのバームクーヘンも。お、かば焼きセットもいいねぇ」
 もう次のお菓子に目が行っている藤堂は、ここでも大量にお菓子やかば焼きセットなどを購入した。
 佐々木も良太もつい藤堂にならって、いくつか購入し、車のトランクは菓子やら酒やら土産で一杯になった。
「さあて、一路東京へ」
 楽し気に藤堂は呟くと、ハンドルを切って本線へ合流し、軽快に車を走らせた。
 佐々木はいつの間にかまた眠ってしまい、はっと目を覚ましたのはもう川崎あたりに差し掛かってからだった。
「ええ、俺、川崎第一って、三流進学校って感じの公立で、お、懐かしい、あのビル」
 良太があたりを見回してそんなことを話していた。

 


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