「コナンと鬼太郎、知ってます」
「それはえらい! まあ、何でも聞いてやってよ、広く浅く、興味あるものちょっと齧りって感じだけどね。佐々木さんとか、アーティストは、深く狭くだよね」
佐々木は、「せやな、直ちゃんには、俺は何も知らん、て決めつけられとおるし」とくすくす笑う。
「いいんだよ、それで。みんなそれぞれなんだからね」
最初に会った頃、河崎と藤堂は英報堂のエリートで、古巣であるジャストエージェンシーにとっては大きなライバルを敵対視していた。
ジャストエージェンシーをバカにしていると思い込んで、河崎にしても藤堂にしても到底和やかに話をするなど思いもよらなかった。
だが、幸か不幸か佐々木が独立し、一緒に仕事をするようになってから、藤堂という人物のほんとうのところを知った。
おちゃらけた発言が多いから誤解されることも多いのだとわかった。
鷹揚で知識が豊富で、よく回りを見ていて、ひとりひとりのことをよく考えてくれる。
かなわんな、俺はまだまだや。
佐々木の家の裏門あたりに車を停めると、藤堂は直子のためにホテルで購入したチョコレートや大阪の銘菓なども一緒に佐々木のバッグを降ろし、「お疲れ様」と言い残して去っていった。
佐々木は離れに荷物を運び入れると、那須に向かう準備を始めた。
ロケバスはオフィスササキの前に夕方六時に寄ってくれることになっている。
「土産は日持ちするみたいやから、うちに置いといてもええな」
車に乗っていただけだが、ちょっと動くと汗が吹き出す。
佐々木はざっとシャワーを浴びると、リビングでミネラルウォーターを飲みながらほっと息をついた。
母親に会うとまたああだこうだ言われそうなので、何も言わずに出かけるつもりだ。
喉を潤してから佐々木は何とはなしに部屋を見回した。
一人を感じるのはこんな時だ。
友香と別れてからも一人だったのだが、ここまで一人を感じたことはなかった。
沢村と出会ってからだ、沢村と離れると一層怖いくらい一人を感じてしまう。
仕事をしているうちはいいのだが、こうして一人の部屋に帰ってきた時の空虚さが段々大きくなるような気がする。
「俺、こんなんやったやろか………」
やはり年をくったからかも知れない。
自分を嗤いながら、佐々木は少しばかり目を閉じた。
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