好きなのに 104

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 ぐいっと酒を開けて、沢村は口の辺りを手の甲で拭う。
「飲んでる相手を春日さんと間違うたんやろ、たまに、根性なしが表に出ることがあるんや、俺」
「そんなの俺だけでいいんだよ。他のやつの前で泣いたりすんなよ」
 ぶっきらぼうに沢村が言い放つ。
「練習終われば、俺の頭の中あんたのことばっかだってのに、あんたは俺のことなんかすっかり忘れて、暢気にスキーなんかに来てるし」
「忘れてなんか………」
 沢村は残りの酒を飲み干すと、沢村は佐々木の首筋に手をまわした。
「……もう限界だったんだ。あんたがいないだけで息苦しくて」
 佐々木の髪をかきわけてそこに口付ける。
「……っ!」
 耳朶を甘噛みすると佐々木の身体に甘い痺れが走る。
 沢村は佐々木を抱き寄せて唇を重ね、じっくりと味わいながら口腔を犯す。
「……っアホが、窒息するやろ……」
 ようやく唇を離された佐々木が文句を言った。
「お前の足引っ張るようなことはしとうないんや……けど、俺かて……会いたかったわ…」
「ほんとに?」
 ぎゅっと腕の中の佐々木を抱きしめる力が増した。
「いつの間にかお前のこと考えてしまうから……スキーに来たんやし……」
 思いがけない佐々木の呟きに、沢村の中で制御不能な獣の血が騒ぎ出す。
「も……無理……俺、手加減できねぇ」
 ソファの上に佐々木を押し倒してセーターを剥ぎ取り、もどかしげにベルトを緩めてすっかり裸にした佐々木に喰らいついた。
「………あっ……!」
 敏感なところを散々嬲られて佐々木は身体を捩ろうとするが、沢村の腕に引き戻される。
 頭の先から足の先までキスで埋め尽くされ、いつの間にかソファからずり落ちた佐々木の身体は芯から熱く溶けて、理性などとっくにどこかへ飛んでいた。
 沢村は既に熱く滾った自分を自由にして佐々木の中に収めるとゆっくりと動く。
 極限まで自分に我慢を強いていた沢村は性急にその身体を蹂躙する。
 すっかり沢村仕様に慣らされた佐々木の身体は勝手に悦び、唇から漏れる喘ぎをとめることもできない。


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