好きなのに 81

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 まじまじっと直子に見つめられて、良太は迷いながら、どうせわかることだし、と観念して口を開いた。
「実は、絶対まだ言わないでほしいんだけど、参加者の最後の一人って実は沢村でさ。京助さん別に俺の友人てだけで、名前聞かないし」
「やーっぱり!」
「でもこの天気だろ? 来れるかどうかわからないし、っていうか、俺は来るなって言ったんだけど、あのやろ、聞かないし、ただ、絶対天候と相談しろっては念を押したんだけどさ……」
 一人で気をもんでいた良太は、直子に話したことでちょっと一息ついた。
「佐々木さん、元妻に会うって言ってたって、あいつえらく気にしてて。どうも、口ぶりから喧嘩でもしたんじゃないかって思うんだけど、佐々木さんに内緒にしてくれとかって」
「ああ、友香さんね、個展に行ったのよ。でもあたしと藤堂さんや浩輔ちゃんや悠ちゃんと一緒だったんだよ」
「そうなんだ」
「うん、でも、佐々木ちゃんもおかしかったんだ、スキー来る前。直は宮崎に行ったらいいのにって言ったのに、何か、行っちゃいけないって思ってるみたいで、そしたら急にスキーに行くって言い出してさ」
 直子は可愛い唇を尖らせて腕組みをする。
「ああ、でも俺、佐々木さんに恨まれるかも! 沢村をキャンプ中にこんなとこに呼んだりしてって!」
「しょうがないじゃん、沢村さんの意思なんだから! 直は沢村っちを応援する!」
「でもさぁ、うまくいけばいいけどさ、何か、ミステリーじゃないけど、何か起きそうな予感?」
 折りしも玄関の窓の外は吹雪。
 二人は苦笑しながら顔を見合わせた。


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