それでもその時その時、臨機応変に完璧に仕事を遂行していく二人には圧倒されることもしばしばだ。
ただ、きっちりとスケジュールを組んで動く性格の三浦としては、ちょっと待てよ、と思うことも少なくないわけだ。
まあ、何が起きても驚かないというスタンスの浩輔にはまだ及ばないというところか。
「よく、あの二人と一緒にやってるよな、平気な顔で」
三浦は心底感心して浩輔をみやる。
「いやあ、鍛えられましたからね~。いちいち驚いてたら、身が持たないですよ」
浩輔は、ははっと笑う。
「なるほど~」
「まだ七時前か。上のギャラリーまだ開いてるな。高野昭三の個展なんて滅多に見られないから、俺、行ってきます」
三浦はおう、と返事をして自分の仕事に戻った。
浩輔と同じような理由で、ギャラリーに向かっていたのは悠だった。
海外での活躍はよく知られている画家の高野昭三が、日本で久々の個展を開いた。
もちろんそこには、日本での個展を渋る高野をくどいて快諾させた、藤堂のプロデューサーとしての手腕があった。
そろそろ五十に手が届こうという高野は、どちらかというと引きこもりがちな偏屈さを持った男だが、同じ世代から見ればひどく若々しく、画面の中で次から次へと新しい試みを繰り広げている。
悠は藤堂からその話を聞いていつか行こうと思っていたのだが、バイトや卒制展の準備で忙しくてなかなか行く機会がなく、旅行の間に開催は終わってしまうので、慌ててギャラリーに向かったのだ。
「あれ、藤堂、まだオフィスにいるんだ?」
オフィスの二階を見上げて悠は呟いた。
世の中の休みとは関わりなく、動いているプラグインの仕事の他に、プロデューサーとしてギャラリーの役員も務める藤堂は、いつも飄々と仕事をやっている。
それは悠の顔を見れば文句を言う河崎にしてもそうだ。
未だに仕事が決まっていない自分としては、何も返す言葉がないので、あまり河崎には会いたくないのだが。
「お前のはせいぜいペットを可愛がるのと大差ない。だから女にバイバイされてもまた次にひょいひょい乗り換えられるんだ」
ドアを開きかけた悠の耳に、いきなり飛び込んできた河崎の言葉。
「毎日のように女を取り替えてた貴様に言われたかないね。だいたい、俺が女の子にバイバイされる原因を作るのは決まってきさまだ! 女の子との約束がある時に限って、俺にああしろこーしろと」
「本気なら女を追いかけるだろうさ。あのガキにしても、所詮あしながおじさんを気取っているお前の自己満足だ。今はもの珍しくて面白がっているが、そのうち飽きるに決まってる。それでお前は仕事の方が面白くなってジ・エンドってパターンだ」
悠はそっとドアを閉める。
薄いジャケットにはまだまだ三月の夜は寒い。
だが、心が冷え冷えとしてきたのは、空気の温度のせいではないだろう。
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