「それで今回参りましたのは、『レッドデータアニマルズ 自然からの警告』の音楽全般を今回ぜひ『ドラゴンテイル』の皆さんにお願いしたいと思いまして、番組のご説明をさせていただきたいんですが」
「いいよ、どうぞ」
気難しいどころか、気さくに対応してくれているのは、ひとみや工藤の類友だからだとしても、日増しに面倒ごとが積み重なっていくような気がしている良太にとってはひどく有難かった。
「うん、なるほどね。私らも犬猫保護活動とかやったりしてるし、絶滅危惧種とか動物のことなら、うちのメンバーみんな賛同してくれてるから大丈夫だよ」
その答えを聞いてホッとしたのもつかの間、「だけどさ」と水野が言った。
「契約書とか、私、まったくわかんないし、高広が書類上のことはとりあえず良太に任せとけばいいって言ったんだけど、いいかな?」
はあ、また人に押し付けやがって、とまた良太はため息を吐きそうになるのを寸前でこらえる。
「大丈夫です。それでは必要書類を作成してまたお持ちしますから、メンバーの皆さん全員のご署名捺印をお願いいたします。納期的には大丈夫でしょうか?」
「それは任せといて」
水野はにっこりほほ笑んだ。
「そういえば、良太ちゃんは私らの曲、どう?」
「『見つめて』とか『光へ』とか好きです。特に『光へ』ってパワフルで元気になれるっていうか」
「ふうん。良太ちゃんがそう言ってくれるんなら信用できるかな」
「え?」
含みがありそうな水野の言葉に、良太は彼女を見つめた。
「こういう業界に長いこと居るとね、何か誰を信用していいかわかんなくなるんだよね」
「はあ、何か、わかります」
水野のような大物ミュージシャンでもそんなことを考えるんだな、と良太は改めて思う。
「でも、良太ちゃんはいつも直球勝負でウソは言わないから、ってひとみが」
良太はちょっと赤面する。
「……っとに、ひとみさん、何話したんですか、もう、参ったな」
水野はフフフと笑う。
「だって、ひとみったら、良太ちゃんのこと可愛くて仕方ないって感じで。でもあいつはその辺のひよっこと違って、一本筋が通ってるって」
「持ち上げすぎですよ」
「会社は良太ちゃんがいないとダメだって、高広の懐刀なんだってね」
一体ひとみさんは俺のことどう話したんだ?
「最近、高広、山之辺とまた騒がれてたね」
「え、ええ」
良太にとってはもう思い出したくない話題だ。
「バカだよね、山之辺も。事務所は売名行為もあったのかもしれないけど、山之辺本人はまだ未練があったんだろうね。まあ、カッコいいもんね、高広は。口を開かなければね、小娘は強そうな男に弱いからさ」
確かに口を開かなければね、と心の中で良太は呟く。
だが水野の次の言葉に良太はドキリとさせられる。
「私も昔は小娘だったからさ」
「え………」
思わず良太は、水野をじっと見つめた。
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