先日志田のヴァイオリンをみんなで聴かせてもらったが、音大を目指しているだけあって技術もしっかりしているし、高校の部活とはレベルが違うが、志田は皆と一緒に演奏するのが高校での醍醐味だとか達観していて逆に面白い。
結局、ピアノとヴァイオリン、チェロとフルートのアンサンブルを演目に選んだ。
クラリネットの榎はフルートもやっているので任せたのだが、音はまあ出ている。
意外なのは、前任者田村に懇願され田村がまた復帰するまで続ければというつもりで引き受けた講師だが、こうして生徒たちと音楽に携わっていることが楽しいと感じていることだ。
教えているというより一緒に音楽をつくっているという感覚が響には新鮮だ。
「どうしたんだ、寛斗」
瀬戸川や寛斗と大テーブルの方に移り、スコアを広げてさっきから瀬戸川の意見を聞いていたのだが、みんながおおよそ納得したところで響は寛斗をみた。
あまり自分が教師だという自覚がないせいか、三島ではなく寛斗と呼んでしまうのをいけないと思いつつも、いつもならああだこうだ口を挟んでくる寛斗がむすっと頬杖をついているのが気になった。
「ゲリラライブがダメ出しされたのが気に食わないのよ」
「ちげぇよ!」
訳知り顔で言う琴美を、寛斗は即否定した。
生徒会に昼休みのゲリラライブを打診してみたところ、却下されたのだ。
許可すればどの部もやりたがるだろうし、逆に音楽部は楽器を持ち出して演奏という手段でアピールできるが、やりたくてもできない部もあり、できることにも差があるからというのが理由だった。
「ケチ臭いよね。調理部とかは実演は不可能でも、作ったもの食べてもらうとかさ、第一、調理部なんて作って食べられるからって、やたら部員数多いんだし、こっちは逼迫してるってのに」
瀬戸川が不服そうに言った。
「へえ、ゲリラライブなんて面白そうなのに却下された?」
話を聞きつけて口を挟んできたのは井原だ。
「そうなんです! 井原さん、伝説の音楽部長として生徒会に何とか言ってやってください!」
琴美はここぞとばかりに勢い込んで訴えた。
「いやあ、俺の時だったら生徒会長も兼ねてたからな、ちょろい……いや、何とかできたかもだけどな」
井原は屈託なく笑う。
「何だよ、伝説の何とかって」
むすっとしたまま寛斗が口を出した。
「だから、井原さんが音楽部長だった時って、すごかったのよ。近隣の高校巻き込んで音楽フェス実現させたり、クラシック、ジャズ、ロック、ジャンル関係なく盛り上がったのよ」
琴美が見てきたかのように寛斗に説明する。
「へえ、そんなにすごかったんだ?」
思わず響も声に出ていた。
響が卒業したあと、井原や元気が三年の時のことで、確か井原の手紙にも音楽フェスを開催することになったから、響に来てみないかというようなことが書いてあったかとは思うが、そこまで詳細は書いてなかった。
「あれはメチャ盛り上がりましたよ」
元気もカウンターの中から聞きつけて強調した。
「だな。特に元気のバンド、ボーカルの朝倉さんは今一つだったけど、何せ元気のギターすんげえし」
「あたしの中学ン時だ、友達と行った! 元気のギターも凄かったけど人気も凄かったよね!」
井原が言うと、紀子も話に割り込んだ。
「井原さんもかなり人気モノでしたよね。ジャズピアノとかかっこよかったです! DVDありますよ、キョーセンセ、また見せてあげる」
「お、おう」
琴美の勢いに響も頷かざるを得ない。
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