そんなお前が好きだった87

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「違うって………やっぱ、あの金髪野郎が好きなんですか?!」
 鼻息も荒く再び、井原は響に覆いかぶさった。
「き…金髪野郎???? って……クラウスのことか? ってかあれは勘違いで……ってか、あれは勝手にあいつが……いや……その………」
「あいつとどのくらいつきあってたんですか?」
 凄むように低い声で聞かれて、響は「えっ…、三…年……」と思わず口にしてしまう。
「三年も? あいつにやらせてたのかっ!」
 怒気を含んだ科白に響は竦みあがる。
「やらせて……って、あんなの勝手にあいつが」
「勝手に、やらせてたわけ?」
「違う! そうじゃなくて、初め、何か後ろ姿が井原に似てた気がして………」
「それだけで三年もやらせてたのに、俺のことは拒否るわけ?!」
 井原は響の顔のすぐ間近で怒鳴った。
 井原とて生身の二十七歳の男だから、セフレのような関係の相手はいたわけで、響を責める資格はないことはわかっているのだが、それでもやはりあの男が響と関係を持っていたことは許せないのだ。
「だから、違うってるだろ! 拒否ったんじゃなくて、俺、お前がさわると、何かこう、わけわかんなくなっちまう…ってか、おかしくなっちまうってか………」
 次には響の唇は井原に襲われていた。
 激しくしつこい口づけに息もつげず、響は頭は真っ白になるのと同時に身体が焙られたように熱くなり、一気に力が抜けていく。
 ようやく唇を離して荒い息をしながらも、井原は響のシャツと短パンに手をかけた。
「や……井原っ……待って……待て…!」
「待ては教わってなくて、俺」
 ジョークともなくそんなことを口走りながら、井原は、さっきの洗濯で渡した着替えに下着はなかったので、パンツの下は直肌のはずだと一息にTシャツだけにしてしまう。
「………やっ、………あっ………」
 響の身体に唇と指を這わせるたびに、肌はびくびくと跳ねる。
 何か、この人、感度よすぎ?!
 そんなことが頭に浮かぶと、井原は頭が暴走した。
「………わ……!! ………バカ! ……やめ……やっ!!」
 井原の指が動くたびに響は必死でわけのわからない言葉を口走る。
「こっちのがきっと……」
 くるりと裏返された響はさらに喚き散らす。
「あ…わっ……あん……! ……変……にな……る…んだっ……てばっ!」
 しかも時折やけに色づいた声が混じって井原の脳髄を直撃するからたちが悪い。
「は……あ……あん…! あっ……ダメっ! やっ!」
「何が…ダメ? 全然、いい…って……」
 井原は響の喘ぎに気が急いて指と換えるのをもう待てなかった。
「うわっ………バカッ……やめ……あ…はっ!」
「心配……しなくても、ちゃんと……ゴム……下心ありありで用意して……大丈夫…」
「……大丈夫…って……何がっ!!」
 それでも何とかゆっくりと響を壊さないように、押し入ると井原は歓喜に震えた。
「…んあっ!……ああっ………!」
 やがて悲鳴のような声が響の唇から迸る。
「……ひび…き…さ…!」
 井原もすぐに果ててしまった。
「……好き…だ…響さん……」
 十年引き摺った恋がようやく報われたことに、井原は意識を飛ばしてしまった響を抱きしめて、呟いた。
 掃き出し窓の外は、既に嵐が去ってそろそろ夕闇が迫り、宵の明星が西の空に微かな光を湛えていた。
 ガチャという音に響は目を覚ました。
 それから見知らぬ天井に訝しんで身体を起こすと、ソファの上に毛布を被って寝ていたようだ。
「う、寒……」
 裸だと気づいた時、たったさっきの怒涛のようなひと時が一気に蘇る。
「あ、目、覚めました? 夕飯、買ってきたんです。スーパーの弁当だけど」
 リビングのドアが開いて、井原が何ごともなかったかのような顔で言った。
「今……何時?」
「六時ちょっと前」
 井原はキッチンに行って湯を沸かし始めた。
「今日は家の夕飯断ったって言ってたでしょ?」
 響は井原の問いには答えずに、「シャワー、浴びる」と毛布を引きずったままバスルームに行きかけて、また戻ってきて洗濯された自分のシャツとパンツを掴むと、バスルームに飛び込んだ。
「今更なのに」
 井原は毛布で身体を隠す響をチラ見して呟いた。

 


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