誰にもやらない10

back  next  top  Novels


「お嬢様たちにぜひ味をみていただきたいとっときのワインがあるんだ」
 わっと歓声が上がる。
 女の子たちはすっかり藤堂の巧みな話術に手玉に取られている。
 さやかは、大沢や土橋らの、さり気なく気を引いている。
「コースケくんもね。ほら、積もる話もあることだし?」
「別にそんなものありませんよ」
 浩輔はきっぱりとさやかに言い返した。
「何だよ、お前、今まで何で隠してたんだよ」
「いや、俺は……」
 土橋にまで詰め寄られて浩輔は助けを求めるように佐々木を見たが、佐々木はリアクションもなく、腕組みをしてみんなのようすを静観しているようだ。
 結局、浩輔もパーティに駆り出されるはめになってしまった。
 
 
   
 
 パーティの顔触れは、仕事関係だろうリーマン組にモデルやタレントなども交じって華やかさを競っていた。
「きゃあ、アレ、加藤なみえじゃない?」
「見て、堀ノ内壮太!!」
 人気俳優やタレントを見つけて有頂天になっているのは直子や保奈美だけではない。
 土橋や、あんなに文句を言っていた大沢までもが、タレントの女の子たちのところへいそいそと飲み物を運んでいる。
「しかしでかいねえ、この別荘。河崎グループの御曹司ともなると、我々庶民とは生きる世界が違ういうわけやねえ」
 佐々木は呆れたように感心すると、ゆっくりと辺りを見回した。
 新しくはないがこの建物は別荘というよりホテルのように豪奢で、ゆったりと快適そうな空間が広がっていた。
「あ、佐々木ちゃんじゃない、久しぶりぃ!」
 浩輔は中に入っても佐々木の後ろに隠れるようにしてくっついていたのだが、その佐々木までが顔見知りのモデルの美女と出くわし、腕を取られて人の輪の中に紛れてしまった。
 やっぱり来るんじゃなかった。
 渋々みんなについてきた浩輔は、広いリビングの隅から動く気になれない。
 河崎はやっぱり女に囲まれていた。
 相変わらず煙草を離さないんだよな…って、今更俺には関係ない…か。
『上司に意見するたぁ、いい度胸だな』
『でも、吸いすぎは身体によくないです』
『タバコ屋のクサいコピーを口にするな』
 豪快な振る舞いや少し粗野な仕草も、何も変わっていない。
 つい、視線が河崎を追ってしまう。
 さやかの指が河崎の手に触れる。
 女たちの甲高い笑い。
 河崎の声を耳にするたび、身体が震える。
 ふいに、河崎がこちらに顔を向けた。
 途端、浩輔はその場を逃げ出し、レストルームを探して飛び込んだ。
 俺って、まだ懲りてないのかよ!
 惨めな自分とは決別したはずだったのに。
 今また思い知らされる、記憶の底に沈めるには凄烈すぎる時間。
 車で別荘に着いた時、浩輔はさやかの冷ややかな視線に迎えられた。
 自分に対しては、刺だけでなく、どこまでも毒がある気がする。
 河崎さんが男の俺なんかに手を出したからか? けど、今もこうして付き合っているのは彼女じゃないか。
 どうして能天気なコースケで放っておいてくれないんですか。
 もうマジんなるのはゴメン。
 報われねー思いに泣くのはつらいもん…

 


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
いつもありがとうございます