「そうじゃない……俺……、てっきりやっぱり力は女の子の方がいいんだろうと思ってたから」
言うか言わないかのうちに佑人は抱きしめられた。
どのくらいそうしていたか、佑人は自分を抱きしめる力の腕に、初めて力の心を感じた気がした。
そして久しぶりのキスが、佑人の心の強張りを緩めていく。
ようやく腕をほどいた力は「行くぞ」と言う。
「どこへ?」
「俺んち。腹減ったから、何か買って行こう。クリスマスってーとやっぱ、ケンタか?」
佑人はまた笑う。
ピザとチキンとハンバーガー。
力のチョイスらしいメニューだが、佑人が隣のレストランのテイクアウトメニューからサラダなどを買い、「ほんとはアルコールがいいんだが」などとブツブツいいながら、ノンアルコールの缶をいくつかとポカリを力が買って、二人は力の部屋へと階段を上がる。
この時、一段飛ばしで階段を上がっていく力の心臓がらしくなく大きく高鳴っていたことなど、佑人は知る由もなかった。
タローに出迎えられたあと、ソファの前のローテーブルの上に買ってきた食料を並べ、力がつけたテレビの大画面を見るともなく見ながら、二人は黙って食べ始めた。
タローもいつの間にか二人の傍らで何か頂戴、と言うような顔をするので、佑人はテーブルの上に置いてあった犬用のビスケットをやった。
あっという間に二つを平らげると、一応それで満足したのか、タローはその場に蹲った。
「あ……」
「何だ?」
力は佑人を振り返る。
「すっかり忘れてた。郁ちゃんが鮨、取ってくれてたんだ、ほんの少し食べただけで、持ってくればよかった」
何となく重い空気に口にするべき言葉を探していた。
出る時は舞い上がっていたし、この部屋にくるまですっかり忘れていた。
「冬だし、ちょっとくらい置いといても平気だろ」
「……そうだな……」
力はノンアルコールの缶の残りを一気に飲み干して、缶を握り潰す。
「ちゃんと、睡眠取ってるのか? 最近学校で寝てばっか」
「だから、学校でちゃんと睡眠取ってるだろ」
「何だよ、それ……」
佑人は微笑んだ。
「まあ、やるときはやらねぇとな。お前や坂本みてぇに余裕のあるやつとは違う」
「余裕とかじゃなく、俺とか坂本はマイペースなだけだだよ。俺、別に大学落ちたって浪人したって、全然構わないし。落ちたら落ちたで、その時できることやればいいと思うし」
「それは落ちる可能性がないヤツの言いぐさだ」
「可能性がないなんて、誰にもわからないよ」
佑人は力の言葉を強く否定した。
「俺、中学の時、焦って色々やり過ぎて、それで、そういうのやめたんだ。人間の心は変わっていくもんなんだって、よくわかったし。期待とか、しない方がいいって」
不意に、これまで人前で口にしたことがないことを佑人は言った。
「変わらねぇもんもある!」
力が断言する。
「変わったとしても、お前のいうのは悪い方へしか考えてねぇだろ?」
佑人は力を見つめた。
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