クリスマスの空2

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「どうよ、うちのサイッコーにイケてるスイーツのお味は?」
 テーブルに手をついて、練が佑人を覗き込んだ。
「あ、美味しいです、このカシスソースとチョコケーキよく合いますね。それにこのケーキ、濃厚なんだけどビターなとこがきりっとしてて、甘ったるいだけじゃないし」
 途端、練は佑人の頭を抱きしめる。
「さっすが、俺の佑人くん! 君こそサイッコーだぜ!」
 その時、店のドアがバンッと開いた。
「てめ、何してやがんだ!」
 店内に響き渡る怒鳴り声の主は力だった。
「心の狭いやつだな、スキンシップだろ、単なる」
「何が俺の佑人くんだ!」
 まだ佑人の肩に置いていた練の手をパシッと払い退けると、力は学生服の上に着ていたコートを脱ぎ捨てて、佑人の横に腰をおろした。
「コーヒー、と何か食うもん」
 力と佑人がつき合っていることを知っている一人である練は、フンっと鼻で笑うとカウンターへと戻っていく。
 佑人にくっつくようにして寝そべっていたタローは、一応主人である力の方へのっそり歩いてきて、お帰りの挨拶をした。
 力がひとしきり撫でてやると、そのまま今度はその足元に寝そべった。
「今日、こないだの予備校模試の結果出たんだっけ?」
 しばしの沈黙のあと、佑人が口を開いた。
「……お前、よくダイレクトに聞くよな。いい加減、心、読めっての。これがその話題を持ち出したいツラだと思うか?」
「テレパスじゃあるまいし、いくらなんでも人の心なんか読めるわけない。言葉にしなきゃわからないっていつも言ってるのは、力じゃないか」
「てめ、上げ足取りやがって、それとこれとは全く違うだろーがよ!」
 そこへコーヒーと佑人の前には紅茶が置かれる。
「ほい、そこまで。とっくに結果はわかってたことなんだから、な? 力」
「うっせーよ、練」
 力はコーヒーをガブリと飲む。
「……っち!」
 慌ててカップを口から離す力に、「ゆっくり飲めばいいのに」と佑人は呟く。
「受験だって、そんな焦らなくても、別に一浪くらい……」
「そうはいかねんだよ」
 力は吐き捨てるように言う。
「だったら、もっと早く加藤先生に進路のこと相談しておけば対策も……。第一、みんなにも何も言ってないんだろ? 俺はたまたま聞いちゃっただけだし」
「んなもん、合格してみなけりゃ、口にできっかよ。対策ったって、実力の問題だろーが」
 今度はサンドイッチを乗せた皿を持ってきた練がフンと鼻で笑う。
「この頑固モンに何言ったってムダムダ」
 早速、力はサンドイッチに手を伸ばし、ガツガツと、いっそ小気味よく平らげていく。
「でも、ボーダーライン上なら、もう少し頑張ればきっと大丈夫だよ」
 力は佑人の言葉を聞くと、首を振りながらサンドイッチを口に押し込み、コーヒーで流し込む。
「お前の頭と一緒にすんな」
「何だよ、それ」
 またもや二人の様子が険悪気味になりつつあるのを見て、「おーっと、そろそろ客が来る」と練が口を挟む。
 練の言った通り、やがてチワワを抱いた常連の有閑マダムがドアを開けた。
 何となくそのまま互いにわだかまり状態で、佑人は先に店を出た。
 ドアを閉める佑人の背中を目で追いながらサンドイッチを平らげた力は、そのままソファにどっと凭れ掛かった。

 


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