「ま、成瀬がいればいいんじゃね?」
軽く坂本は言い、さらに「ベッドであっためてやれば」などと佑人に耳打ちする。
顔を赤らめた佑人は少し上目づかいに坂本を睨む。
「でもさ、何か、最近、どうなんだろって思うんだ」
「何が?」
「俺なんか、力にとってそんな面白みがある人間じゃないしさ」
しばし坂本は佑人をじっと見つめた。
「何言っちゃってんの、力のヤツ、そんなこと言ったのか?」
声高に坂本が言った。
「いや、そうじゃないけど、でも………やっぱり女の子のが似合ってるよ、力には」
すると坂本は、フーン、と腕組みをして椅子に凭れ掛かる。
確かにほっといても何故か力には女の子が寄ってくる。
坂本は今日も、学校の玄関で力が二年の髪の長い子に告られているのに出くわした。
たまたま佑人は日直で先に教室に上がってしまっていたので、そのシーンを目の当たりにしなくてよかったと内心思ったのだが。
「俺、つき合ってるやついるから」
力がそっけない返事を返すと、二年生女子は見る見る目に涙を浮かべ、「ごめんなさい」とペコリと頭を下げて走り去った。
女に言い寄られることはしょっちゅうだが、以前のように本能に任せて寄らば喰うみたいなところが最近見られないのは、力が佑人に対してマジだからだと、坂本はとりあえず認めていた。
未だにどこを受験するか教えようとはしないが、結構受験にマジになっているのも、佑人のためではないかと。
だが、佑人の言葉から何となく二人の間が揺らいでいるらしいと坂本は感じ取った。
この機に乗じて二人を別れさせるということも頭を過ぎる。
だが………
成瀬の心の中はどう考えてもな………
「考え過ぎるのがお前の悪い癖だよな。そういえば、今年のクリスマスイブはどうするんだ?」
「別に何も。家族で一緒に過ごすのはみっちゃんのスケジュールの都合もあって二十五日の夜ってことになってるし」
「じゃあ、今度こそ、パーティやろうぜ、俺んちで」
「え……?」
「うちはいつもその頃、親は海外でさ」
クリスマスもイブも平日で塾もあるから力とは何も約束をしているわけではないし、冬休みも冬期講習に通うと言っていた。
「そうだね………」
去年のクリスマスイブは力がバイクで佑人を家まで送ってくれたんだっけ。
昨日のことのように覚えている。
いつもならなんとも思わないはずが、今年、一人で過ごすのは何だかひどく寂しい気がした。
力はかなりシャカリキになって勉強しているようだった。
カフェ・リリィで言い争いをして以来、佑人は力と数えるほどしか言葉を交わしていない。
力の邪魔はしたくないが、たまに声が聞きたくなる。
だが力は、ここのところ学校でもあくびをしているか腕組みをして目を閉じていることが多くなり、声もかけづらい雰囲気だ。
受験に関係ない授業は教科書の影で寝ていることもある。
もっともそれは力だけではない。
みんながいよいよ戦闘態勢に入ってきたという感じではある。
back next top Novels
にほんブログ村
いつもありがとうございます
