「まだ業者が来てくれなくて、寒いんで覚悟してください。家具のクッションとかは張り替えたり、照明もLEDに変えたりしてありますが、外見はなるべく昔のままにしてあります」
公一の案内で、古いグランドピアノや暖炉、五十号ほどのヨーロッパの風景画を筆頭に、いくつかの風景画が壁に掛けられている。広い階段には滑り止めにワインレッドのカーペットが張られている。
古い彫刻が施されたアンティークなソファセット、細長いテーブルのあるダイニングと広く明るいキッチンのあと、一階の奥にある主寝室と少し小さめの寝室、やはり二十年程前に温泉を引いたという広いバスルームを見て回り、二階へとあがる。
二階には四つほどの部屋があり、二階にも温泉を引いた時に増築したバスルームがあった。
「コンドミニアムを建てたので、今はここは綾小路家の関係者しか使いませんが、冬は大抵スキースノボと温泉、夏は避暑と温泉が楽しめます」
公一の説明を聞きながら一通り見て回る間に、良太はとにかく写真を撮りまくった。
「じゃあ、四時頃コンドミニアムの方にお迎えにあがります」
ちょうど空調の業者から今から来てもいいかという連絡が入ったというので、チーズやハム、ソーセージなど土産が買えるショップなどを教えてもらうと、公一が呼んでくれたタクシーで二人は屋敷を後にした。
「撮影はちょっと遠慮したいけど、冬はとても風情がありますよね。特にクリスマスだし」
タクシーの車窓から雪景色に目をやりながら良太が言うと、「寒いところは寒い時に来るのがいいんだ」などと工藤が言った。
「ええええ」
良太は不満そうな声で工藤を見た。
だがクリスマスのイリュミネーションで溢れ雪が降り積もる街を歩くと、なんとなくわくわくするものがある。
「そんなに買ってどうするんだ?」
鈴木さんや森村、それに会社のみんなが食べられるお菓子も、とチーズ工房やハムソーセージの工房、パティシェリ―などであれやこれや買っている良太に工藤が口を出した。
「今夜八時くらいには羽田に着くでしょ? だったら、ちょっとプラグインのパーティ、顔出せるかなと思って、お土産にチーズとかいいかなと」
それを聞くと、フンっと工藤は鼻で笑う。
文句を言いながらも買い物に付き合ってくれた工藤が連れて行ってくれた老舗寿司屋のランチがまた美味かった。
「何か、帰りたくなくなるなあ」
コンドミニアムに戻るタクシーの中で、良太がぼそりと言った。
我ながら子供っぽいとは思いつつ、工藤とこんな風に一緒に歩いたり食事をしたりとか、東京ではないからできるような気がした。
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