ロマンチックな展開なんか毛ほども期待しちゃいないけど、たまにはさ、ご飯食べに行くくらいさあ。
この分だとイブはそのロケに使うという屋敷を見に行って、札幌から帰ってくるともう既に一日終わりました、ってなことになるだけだよな。
良太はこっそりため息を吐く。
「明後日はまた藤田から呼び出しを食らっている」
げ、フジタ自動車会長の藤田は工藤を気に入っているのはいいが、必ず年末、呼びつけて飲み会だ。
まあ、これじゃ工藤もクリスマスどころじゃないよな。
そういえば、千雪さんや京助さんもクリスマスなんてのは毎年ないに等しいって言ってたな。
千雪さんは原稿の締め切りに追われ、京助さんは年末になるとなぜか増える司法解剖でモルグに籠るのだという話だ。
イブにモルグに籠ってご遺体とご対面、なんてのよりは札幌のロケハンのがまだマシ?
「俺もじゃあ、明後日の晩、プラグインのクリパ、間に合えば行ってきますから」
そう言いながら面白くなさげな良太の表情を見て、「いいじゃないの、このところ良太ちゃんも忙しいばかりだから、プラグインのクリスマスパーティ、楽しんできたら?」とこのオフィスの要ともいえる鈴木さんが笑う。
「そうっすね。間に合うようにエア、取れればいいけど」
良太は早速、飛行機のチケットを確保するべくパソコンに向かう。
大体今頃から、この時期、取れるのかよ?
問題はそこじゃんね。
「おい、チケットは紫紀さんが用意してくれている」
すると一件電話を終えた工藤が言った。
「え? なんで紫紀さんが?」
怪訝な顔で良太は工藤を見た。
「以前行った綾小路の山小屋を千雪が横溝風な舞台にして書いたんだと。千雪から使っていいかと打診があったと紫紀さんから連絡があった」
「だったら別にわざわざ行かなくたって、そこ使わせてもらえばいいだけじゃんね」
ボソボソと良太は言った。
「ああ? 確認しないで使えるわけないだろう!」
「はいはい。だって、紫紀さんちの管理なら万全じゃないのかよ」
工藤の怒号にも小声で良太は言い返す。
確かに、管理が万全だとはいえ、映画やドラマで使うとなると、いろいろと見ておく必要があることくらい、良太も身に染みてわかっているのだが。
「チケット、じゃあ、往復用意してくれてるってことですか?」
「帰りは新千歳十八時五十五分発、羽田二十時四十分だ」
「はあ、わかりました」
まあ、ちょっとはプラグイン、覗けるか。
もうずっと、仕事漬けの毎日だから、鈴木さんじゃなくてもちょっとくらい楽しみがあってもいいよな、クリスマスくらい。
良太はそんなことを思いつつ、工藤ともずっとここんとこご飯も食べてない、となんとなく面白くないのだった。
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