「お願いできますか? 申し訳ないです。私も小山内よりは吉谷の方が若い上に演技も断然上だとは思うんですが」
それを聞くと工藤は全く調子のいいやつだ、と思う。
「その代わり、ほかのドラマに小山内を使えばいいでしょう」
「なるほど、そうですね!」
杉浦は感激して電話を切った。
フン、俺の与り知らないところで何をやろうとこっちは知ったこっちゃない。
工藤は心の中で不遜に呟いて窓の外を見た。
かなり雪がひどくなっていた。
紫紀から連絡をもらった時点で、名古屋から札幌に飛ぶつもりが頭の隅にあった。
打ち合わせが終わり、雪の状態では欠航もあり得たので、とりあえず行ってみるかとセントレア空港に向かった。
工藤を乗せた飛行機は何とか飛んだが、新千歳空港に着いてみるとそれ以降の便は欠航となっていた。
タクシーでニセコに向かい、何かあったらと言われていた公一の携帯に途中で電話を入れると、コンドミニアムの詳しい場所を説明し、外で待っていると言う。
公一の電話を切ってから三十分ほどで、タクシーはコンドミニアムに着いた。
「雪の中、お疲れ様です」
玄関の前に立っていた公一が駆け寄ってきた。
「お荷物お持ちします」
カートをトランクから出して、公一は工藤をコンドミニアムの中へ案内した。
「お疲れでしたでしょう。お食事のご用意できておりますよ」
玄関のドアを開けると、そういう咲子の後から京太がパタパタと出てきたので、工藤はちょっと面食らったが、靴を脱がなくていい環境は面倒くさくなくてありがたかった。
「工藤さん、お疲れ様です」
ジャージに着替えてすっかり寛ぎモードの良太もやってきた。
母親に言われて京太は工藤に恐る恐る、こんばんはと言った。
自分の時とは対応が随分違うと、良太はくすりと笑う。
怖い顔してるからじゃんね、と工藤をチラリと見やる。
「さっそくお食事、どうぞ。お荷物お部屋に運んでおきますね」
公一に言われてリビングに足を踏み入れ、大きなクリスマスツリーを見た工藤は一瞬、大昔、曽祖父母の家で迎えたクリスマスがフラッシュバックした。
クリスマスツリーなど、あらゆる商業施設やプラグインの河崎の家でのパーティでも見ているが、子供の頃の情景が舞い戻ったのは初めてだった。
おそらく古い造りを模したこのコンドミニアムが何となく昔の古い家を思い起こさせたのだろう。
クリスマスの一か月ほど前になると、暖炉があり、ある種陰気な暗がりを持つリビングに、どこからか取り寄せた本物のもみの木のツリーが置かれた。
楽し気にツリーの飾りつけをする曾祖母は、工藤によく手伝わせた。
そういえばロンドンに長く住んでいたという曽祖父母の家では靴を履いて過ごしていた。
「冷めないうちに早くいただきましょうよ!」
工藤が来るというので、良太もどうせなら一緒に食事をしたいと待っていたのだ。
しばし妙に感傷的な意識にとらわれていた工藤は良太の言葉に我に返った。
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