何となくクリスマス!7

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「あ、それでは私たちはこれで失礼します。どうぞごゆっくり召し上がってください。食器類はシンクに置いて下さればまた片付けますので」
 工藤と良太がテーブルに着くと、咲子が言った。
「いろいろありがとうございます」
 良太は咲子に礼を言った。
「お鍋にシチューはまだありますからお代わりどうぞ。あ、そうだ、明日の朝食は何時になさいます?」
「えっと、九時、でいいですよね? 工藤さん」
 良太が工藤の顔を見ながら言った。
「わかりました。じゃ、失礼します」
 京太がさっき咲子のことを、「お母さんは天然でぽやんとしたとこがあるから、俺が注意してないと」などと生意気そうな口調で言ったのを良太は思い出してつい笑みが浮かぶ。
「俺も失礼します。明日は、じゃあ、十一時くらいにお迎えに上がりますね」
 公一もぺこりと頭を下げてリビングを出て行く。
「公一さんはどこに泊まってるんですか?」
 気になって良太は聞いた。
「明日ご案内する、山小屋です」
「え、そうなんだ?」
「ほんとは泊まっていただいてもいいんですが、山小屋、すっげえ寒いんです。なんか空調の利きが悪くて、業者に頼んであるんですが。管理人室は大丈夫なんですけどね」
 公一はこれから咲子と京太を送りがてら、その山小屋に帰ると言っていた。
「原作だと、季節は夏みたいだからよかった。冬、このクソ寒いとこで撮影とか、考えただけでぞっとする」
 良太は思わず身震いする。
「厳冬の撮影なんぞいくらもあるぞ。お前も小樽とか知床とか行ってるだろ」
 ぼそりと工藤が返す。
「順調にいけばいいんですけどね。ほら、また面倒な人がキャスティングされてたりするとやだなっと」
 工藤はフンっとほくそ笑む。
 ちぇ、またバカにしやがって。
 良太は思うが今に始まったことではないし、そんなことを気にしてたらこの男とはやっていけない。
「あ、何飲みます? ワイン、シャンパン、日本酒、よりどりみどり」
 良太は立って、傍らのテーブルの上に置かれているワインクーラーを見た。
「ワインにするか」
 工藤の仰せに従って、良太はワインのボトルを手に取った。
「さっき聞いたんですけど、咲子さんの息子さん、京太くん生まれる時、咲子さん大変だったみたいで、たまたま山小屋に来てた京助さんと公一さんが病院に運び込んで助かったらしくて、それで京助さんから一字もらって、京太って名付けたって言ってました」
 良太はワインをグラスに注ぎながら、咲子から聞いた話をした。
「へえ? 一応京助も医者をやってるからな。たまには役にたったんだろ」
「咲子さん、山小屋にお客さんがある時、食事の手伝いしてるそうで。そうそう、千雪さんもその時いたみたいで、十二年前? 公一さんも学生で遊びがてら手伝いに来てたって」
 料理はプロはだしだが、家庭料理の温かみもあってどれも美味かった。
「このコンドミニアムも東洋グループの保養所として建てたらしいですよ。レンタルもしてるみたいだけど、レトロな雰囲気なのに、機能は最新式って感じで」
 全体が吹き抜けになっており、三つある寝室へはそれぞれの階段がついている。
 ヨーロッパのリゾート地にあるコンドミニアムを思わせる造りで、スキーやボード用の専用の部屋も用意され、リビングの中央には大きな暖炉もあるが、それこそ空調が利いているので、火は入っていない。

 


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