好きだから100

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「だよね~、良太くん裏切ったりしないよね~」
 かおりに詰め寄られた沢村はがばっと良太を抱きしめる。
「俺を見捨てたりしないよな?! 良太」
 沢村はギシギシ腕に力を入れる。
「おい、いい加減にしろ!! 離せよっ!!!」
 襖が開いて、料理が運ばれてきても沢村はいっこうに離そうとしない。
「あ、それこっちください!」
 肇が固まっている横で、かおりはスタッフのお兄さんにてきぱきと指示して、テーブルの上に料理が並んだ。
 お兄さんはチラリと沢村と良太に目を走らせて出て行った。
「こんの、クソバカ力!」
 ようやく沢村を押し戻すと、良太は反動で後ろにひっくり返って肩で息をする。
 沢村はへらへらと笑いながら座り直した。
「すぐにでもくっつきたいってのはわかるけど、さっきのお兄さんもびっくりしてたから、ここではねぇ。とりあえずお料理もきたことだし、乾杯いこ! ほらほらあ」
 何故か明るくなったかおりの声がそれぞれ複雑な心理状態の男たちの上に振ってきた。
「その前にしっかり訂正しとくけど、かおりちゃん、俺とこいつは何でもないから! かおりちゃんの誤解だから」
 いつまでも沢村にからかわれてばかりでたまるかと、良太が言い放った。
「え、そうなの?」
「良太、つれねぇぞ!」
 また抱きつかんばかりの沢村をすんでで阻止した良太は「いい加減にしろ!」と怒鳴りつける。
「とにかく、乾杯! 春のお前らの結婚にと来年もよろしくってことで」
 良太が促してやっとジョッキを合わせて乾杯となったと思うや、ごくごくとビールを飲んで一息ついたかおりが、「で? どうなってるのよ?」と話すまでは許さないとばかりに二人を睨みつけた。
「どうなってるっても………」
 やっとお通しに箸をつけた良太は、かおりの剣幕にも説明のしにくさに口ごもる。
「こいつが、振られるたびに俺に泣きついてくるっつうか……」
「だから俺にはこいつっきゃいねえんだよ!」
「その言動が誤解を招くんだろーが!」
「事実だ」
 さらに沢村ははああと大きな溜息をついた。
「お前に見放されたら、もうオープン戦だって乗り越えられねー。開幕早々リタイアってのもざまーねーよな~」
「何言ってんだよ、お前」
 今まで沢村に対してあまり口を開かなかった肇が急に強い言葉で苦言を呈した。
「お前自身が言ってる通り、高校の時から野球やってるやつが憧憬の念を抱く日本でトップを争うスター選手なんだぞ! それこそざまーねーようなこと言うな! たかが振られたくらいで!」
 一瞬きょとんとした顔で沢村は肇を見た。
「活を入れてくれてどうも監督! ってとこ?」
 沢村は茶化して苦笑いする。
「真面目に言ってるんだぞ、肇は。どこいったんだよ、いつもの、俺がやってやるってな過剰な自信家の沢村智弘は! 落ち込んでる暇があったら自主トレに身を入れろよ!」
 肇に便乗して良太も沢村に檄を飛ばした。
 冗談ではなく、こんなところで沢村にリタイヤなんかされた日には………。
「ただでさえいろんなプロスポーツが台頭して、プロ野球も昔みたいにゲームやれば観てくれるなんて時代じゃない、スター選手がいなきゃもう孤城落日なんだっ!」
「俺一人いなくなったところで、次代のスター候補なんかいくらでもいるさ。大輔なんかもう既にスター様に片足かけてるぜ」
 激昂する良太に沢村も激昂で返す。

 


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