好きだから107

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「良太がさっき、沢村っちもそのことで怒ってもいないって言ったけど、昨夜会ったみたいで」
「同級生の肇さんとかおりさんとあったんでしょ? 良太ちゃん、沢村っちから何か聞いたって?」
「うん、それが…………」
 アスカは言葉を切った。
「どうかしたの? そういえば良太ちゃんと沢村っちがって何?」
「今朝、沢村っちが良太送ってきたのよ。良太の部屋、会社の上だから、沢村っちの部屋に泊ったんだと思う」
「夕べ飲み過ぎたんじゃない? か、沢村っちの相談に乗ってたとか」
「多分、そうだと思う………んだけど……」
 アスカは口ごもる。
「実はさ、うちのバカ社長が、昨日、アメリカから帰ってきた女と昼過ぎに出てったっきりで、その女、前にもきてたことあって。とにかく、うちの社長には良太も色々振り回されているわけよ。沢村っちも、佐々木さんとぎくしゃくって時に、昔好きだった良太がそんな状態だったらって」
「待って、沢村っちが良太ちゃんのこと好きだったのってホントだったの?」
 直子は聞き返した。
「うん、前にちょっとね、工藤さんなんかいい歳だし、昔の女とか、色々いるわけよ。で、良太とのことも何か、はっきりしないっていうか、そんな感じだから、良太とそれこそヤバくなることなんかしょっちゅうで、ちょうど再会した沢村っちに告られて、一時は良太が会社辞める辞めないで大変だったんだよ」
「え? そんなことあったの?」
「まあ、結局元サヤで、沢村っちは振られた形だけど、佐々木ちゃんと付き合うまでは、良太、あんなオヤジより沢村っちのがいいじゃんなんて思ってたんだけどね。でも傍で見て何言ったって、本人、工藤にもう刷り込み状態だから」
 直子は思わず笑う。
「やーん、刷り込みっ! 受ける! 良太ちゃん一直線だもんね」
「何せ、今じゃ、良太なしじゃうちの会社ガタガタになるの目に見えてるから、そこんとこもっとちゃんとしてもらわないと、工藤さんに! とは思ってるんだけどさ、工藤さんがああじゃ、いい加減良太だってキレたのかもって、さっきちょっと焦っちゃったのよ。きっとあたしの思い過ごしだ」
 アスカが、はあ、と深く息をつくと、直子もアスカに同調したように、溜息をつく。
「佐々木ちゃん、何も言ってくれないし、わかんないけど、やっぱり沢村っちのことを思って別れようとか思ってるんじゃないかな。沢村っちって、スターって位置にいるのに佐々木ちゃんのことになると、全然そんなことどうでもよくなっちゃうみたいだから、植村の時もそうだったし、スキーの時だって、無理やり飛んできたり、平気で危なっかしいことやっちゃうから」
 直子はしみじみと語る。
「でもそのくらい恋人に情熱的になれるって、あたしは沢村くんのそういうとこ好きだけど」
「佐々木ちゃんは多分、そういう情熱みたいなものは一過性だと思ってるんだわ。友香さんとのことがあるから。それにやっぱ、今回お母さんが怪我されて、入院といっても一日だけだったけど、はたと我に返ったっていうか、自分のことだけ考えてればいいってわけにいかないって」
 アスカはそれを聞くと、なるほどと頷いた。

 


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