好きだから113

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    ACT 16
 
 
 青山プロダクション主催で行われる毎年取引業者を招いての忘年会は今年一段と賑わった。
 というのも、中川アスカ、志村嘉人、小笠原裕二、南澤奈々と所属俳優全員が顔を揃えた上に、途中から関西タイガースの沢村智弘がレッドスターズの八木沼大輔を伴って現れたからだ。
 しかも沢村がイメージキャラクターを務めたアディノのウエアやシューズ、バットやボールなどを二人のサイン入りで景品に提供してくれたため、恒例のビンゴゲームは異様な盛り上がりを見せた。
 工藤はいつものごとく短いスピーチを終えると、招待客の対応に追われていた良太にあとを任せてちゃっちゃか会場を後にし、良太を悔しがらせた。
「やっぱり佐々木ちゃん、来られなさそう?」
 一人、顔を見せた直子を捕まえてこそっとアスカが囁いた。
「うん………藤堂さんと一緒にまだずっと制作会社に詰めてて」
 今日の直子はゴスロリのゴくらいな感じのおとなしめだ。
「そっか………直ちゃんも何かいつになく疲れてっぽいよ」
「私は……無理やり佐々木ちゃん心配でついてっただけなんだけど、ついてって正解。主にみんなの食事とかを用意したり。でも佐々木ちゃんなんかおにぎり口元までもっていかないと、何も食べずに仕事続けちゃってたから、ほんと」
 そっかあ、とアスカが頷いた。
「プラグインも今日は浩輔ちゃんと三浦さんだけ。あの、イベンター藤堂ちゃんも顔見せないなんてさ」
 直子を見つけた沢村は、一言二言言葉をかわしたが、良太から、面倒な仕事で手一杯らしいとは聞いていたので佐々木のことは口にはしなかった。
 沢村は超陽気な八木沼のお陰であちこちで騒がれ、珍しく笑っていた。
 十時を過ぎた頃、二人のスラッガーは翌日は朝から予定があると、良太が呼んだタクシーで帰っていった。
「あーあ」
 思い切り声に出した直子に、良太がシャンパンの入ったグラスを渡すと、直子は勢いよく一息で飲み干した。
「う……直ちゃん、大丈夫?」
「もう、こうなったら飲んでやる!」
「え、ちょ……」
 直子はバイトのウエイターから今度はワインを渡されている。
 そこへバタバタと二人の男が入ってきた。
「佐々木ちゃん!」
「藤堂さん!」
 直子や浩輔がすぐに気づいて二人に駆け寄った。
「遅くなりまして」
 迎えに出た良太に藤堂がニコッと笑った。
「終わったの? 仕事」
 心配顔で直子が佐々木に尋ねた。
 それにしても佐々木さん、妙にシャープな美貌というか痩せたんじゃないか?
 二人を出迎えた良太は佐々木を見て思う。
「まあ、一段落ついたよって」
「この時間ならまだ間に合うかと思って、顔だけでもとはせ参じました」
 藤堂が佐々木の言葉を引き取って言った。
「おや、このウエアやバットは」
 賞品の中にまだ残っていた沢村や八木沼らのサイン入りのウエアやバットを目ざとく見つけた藤堂に、周りにいた者たちが口々に二人がついさっきまでいたことを面白おかしく話して聞かせた。
 途端、佐々木の微笑がぎこちなく曇るのを、良太は見て取った。
 あいつら帰ってモノの十分も経ってないのに、すれ違いかよ。
 ったく沢村ぁ、お前、どこで運を使い果たしたんだよ!
 良太は心の中で沢村を思い切りどやしつけた。

 


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