ACT 17
予定した時間は大幅に遅れたものの、二十四日の朝、佐々木は浩輔と共に大和屋に出向いた。
会議室のモニターに映し出される映像はたかだか十五秒ほどのものだが、社長の原をはじめ、広報部長岩永、広報担当の綾小路小夜子、それに営業部長田辺と、顔を揃えた面々からは好印象を得た。
その後、イベントの最終打ち合わせに入った。
年明け二日から四日の着物最新作の展示、二日には着物ショーと今年も茶の湯の開催、三日間通して着物の体験イベントが予定されている。
年初に行われたイベントは織、染の他、画家の絵をもとにした着物の展覧会や着物ショーはモデルだけでなく著名人数人にも参加を依頼しての大がかりなものとなり、マスコミにも取り上げられたりと大きな話題を呼んだ。
来年度のイベントは、今年ほど華やかではないが、ポイントを押さえた実質的な内容となっていた。
茶の湯は前回と同じく陽世院流師範佐々木淑陽一門が取り仕切って行われることになっているが、全員が大和屋の着物を使用して、実際に着物を着た動きなどをもっと知ってもらうという目的もあった。
「今年は体験イベントをもっと充実させることに重点をおいて、一人でも多くのお客様に体験してもらうためのホテル側とのコラボメニューも準備できております」
佐々木も浩輔も明け方までCMの制作会社に詰めて、二、三時間の睡眠しかとれなかったが、それでもクライアントの前ではビシッとしないと、と自分に気合を入れていた浩輔は、最後の一言までクールに締めてくれた。
「いやあ、浩輔、ほんま、頼もしうなったわ」
昼前に会社を出ることができた二人は、タクシーを捕まえて乗り込んだ。
「何ですか、急に」
隣に座る浩輔が佐々木を振り返る。
「しかも営業とクリエイター兼ねてて、これからのステイタス最前線やんか」
「勘弁してくださいよ、許容範囲越えたことやらせられても」
浩輔は懸命に抗議する。
「いや、実際やってるやん。次回大和屋のプロジェクトまたやるいうことになったら、今度は浩輔がメインでやれるな」
「クライアントが承知しませんよ。佐々木さんだからOKなんです」
「ベリスキーも新プロジェクト、浩輔がメインでオファーが来たんやろ?」
「そうですけど、ああ、そうだ、言うの忘れてましたけど、阿部さん、憶えてます? ベリスキーの」
「阿部? そんなやついたっけ?」
そういえばと思い出した浩輔は、担当の藤本が支社のサポートで数か月いなかった時に、阿部が担当になって散々な目を見たことをかいつまんで話した。
「二度とも見もしないで差戻し? 何で?」
「どこがどう気に入らないかって聞いても、そんなこともわからないのかとか、みくびってるのかとか、具体的なことは何も言わないし、デザイン、端っから俺のなんか見る気もないって感じで、藤堂さんも俺のデザイン見て、悪いところが見当たらないって言うし、結局のところ、ちょうど広報部長がやってきて、いいじゃないかって言ってくれたからよかったようなものの、でなければ最終的にボツってました」
「何やね、そいつ、見る目がなかったとか? 或いは今回の東洋不動産みたいな策略とか?」
「違いますよ」
浩輔はちょっとふくれっ面になり、一呼吸おいて言った。
「佐々木さんだったんです」
「俺? 何が?」
佐々木は首を傾げて聞き返した。
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