好きだから132

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 坂下君江は箱根の別荘を管理している女性で、沢村とも子供の頃からの顔なじみだ。
 前々から沢村が気に入っているらしいこの別荘を沢村名義にするとも彰子は話していたのだが。
「こないだ、少しお会いしたの。すてきな方ね」
 自分の顔が険悪になっていくのを沢村は感じていた。
「あんた、佐々木さんに何言ったんだ?! いいか! 金輪際俺に構うな!」
「え、智弘、待って!」
 沢村は母親を残してたったか駐車場に降りた。
「クソオヤジの次は母さんかよ! ったく、放っとけよ!」
 カッカきて車に乗り込みドアを乱暴に締めた。
「それにあの手塚って野郎!」
 それでもエンジンをかけてから、「クッソ、クールダウンだ」と呟いた。
 これで事故ったりしたらいい笑いものだ。
 手塚が山荘からコンビニなどは遠いと聞いていたので、中央道に入ると談合坂のサービスエリアに立ち寄り、弁当やらパンやら飲み物やらとレトルトのスープなどと一緒にバナナを見つけて買い込んだ。
 沢村は車に戻って一息ついてから、本線に入るとぐっとアクセルを踏んだ。
 
  
 

 
 
 今年もプラグイン主催のクリスマスパーティは盛況だった。
 モデルや俳優、業界関係者など、様々な人々が入れ代わり立ち代わりやってきてパーティを楽しんで帰っていった。
 イブの夜から開けて夜明けまで、プラグインの面々はいつもながらてんてこ舞いだが、忙しい仕事から解放された分、張り切っていた。
「大丈夫? 直ちゃん、来てくれてありがとう」
 珍しく一人で窓辺に佇んでいる直子に、浩輔がミモザのカクテルを差し出した。
「ありがとう。佐々木ちゃんいないからちょっと寂しい感じ」
 パーティに一人で参加するのはあまり気が進まなかったが、浩輔から誘いの電話があり、迎えに来てくれた。
「佐々木さん、今回はハードワーク過ぎたからね。ほんとはこんなに仕事が押すはずじゃなかったのにね」
 浩輔もちょっと肩を落とし気味だ。
「うん、だからちゃんと休んでほしい」
「そうだね」
「よっ!」
 二人に声をかけてきたのは青山プロダクションの良太だった。
「佐々木さんは?」
「オフィスは昨日と今日お休みにしたんだ。昨日仕事が上がるって言ってたけど、結局今朝になったみたいで、浩輔ちゃんと大和屋さん行ってきたって」
 浩輔に聞いたのだ。
 直子のことを思って休みにしてくれたんだろうとは思うのだが、直子にしてみれば佐々木が忙しいのであれば手伝いたかったというのが本音だ。
「俺も、実は夕方まで寝てたんだ」
 浩輔が言った。
「悠ちゃんや高津さん、悦子さんが準備やってくれて助かった」
 その三人はカウンターでカクテルを作ったり、グラスを取り替えたりと忙しく動いている。
 広いリビング全体は、三人のアーティストの手によって、いつもながらすっかりクリスマスワールドと化していた。
「藤堂さんもあんまし寝てないんだろ? あの人タフだよな」
「いや、俺以外、みんなタフだよ、うちの面々」
 感心する良太に浩輔が笑う。
「大和屋さんのイベントCM、今年は去年程大々的じゃなくてまだよかったじゃん」
「そうだね。去年は展示会以外に展覧会もあったからね。ショーも大がかりだったけど」
 大和屋は何とかクリアできたが、問題の東洋不動産の件は、まだ返事が来ていないらしい。

 


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