好きだから134

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     ACT 18
 
 
 
 
 粉雪がずっと舞っていた。
 東京と比べると気温がかなり低い。
 山荘に入るとリビングには薪ストーブが燃えていて温かかった。
 佐々木はずっと眠っている。
 時折苦し気な呼吸になり咳をするので、沢村は汗を拭いたり、熱用のシートを取り替えてやった。
「医者のくせに、何だよ、市販の薬ばっかじゃねぇか」
 枕もとのテーブルに並べてある薬やドリンク剤、ポカリや経口補水液を見て、沢村は呟いた。
 赤外線体温計があるので、熱は測りやすいだろう。
 ここに着いたのは八時頃だった。
 そうひどい雪ではなかったが、気を張って運転してきたので、ここで佐々木の顔を見た時はほっとした。
 それから隣のベッドに座って、佐々木を見つめていた。
 諦めるつもりはなくてももう会えないかと思ったこともあった。
 佐々木が頑なに沢村を拒否しているのはわかったが、稔と一緒だったり、仕事とはいえ八木沼の件で練習場に現れたりと、むしろ沢村を煽ることばかりで、結果佐々木を追いつめるようなことをしてしまった。
 とにかく今、こうして、佐々木の吐息が感じられるほど傍にいられることが嬉しかった。
 沢村はしばらくそうしてただ佐々木を見つめていたが、稔が佐々木の携帯を鳴らしたのは午前零時を過ぎた頃だった。
「一応さっきインフルの検査はしたが、かかった頃合いで陽性にならねぇことがあるし、明日になっても熱が結構高いようなら、内村医院に電話しろ。さっき事情話したら、そっちに来てくれるってよ」
 おそらく稔は誠実な人間なのだろう。
 もし仮に、万万が一、佐々木が自分をどうしても拒否するというのなら、稔なら託せないこともない、かも知れない。
 少なくともあのおちゃらかし大輔とかでは断じてない。
 だがそれは万万万が一の話だ。
 フットライトの柔らかい明かりだけにしてあるが、目が慣れると佐々木の顔もしっかり見えてくる。
 何もしてやれないのが、沢村はもどかしい。
 それにしても彰子が佐々木に何を言ったのかが気にかかる。
 父親の方はどうやらマスコミまで利用したアスカの引っ掻き回し作戦のお陰で佐々木の存在にも気づいていないようだ。
 だからこれで万事うまくいったと思っていたのに、確かに箱根の別荘の持ち主は彰子だから、坂下君江が佐々木のことを話しても仕方がない。
 君江はどういうふうに佐々木とのことを彰子に話したのだろう。
 いや、君江から佐々木を何度か連れて行ったことを聞いて、あの慈善パーティでの沢村の失態発言に結び付けて、佐々木と沢村が付き合っていると判断したのか、それこそ調査員でもやとって調べさせたのか。
 ただ、彰子が夫の宗太郎にそのことを告げたとは思えない。
 彰子は宗太郎を嫌っていた。
 憎んでいると言っていいくらい。
 だが、佐々木からしてみれば、宗太郎が息子が付き合っている相手を調べるとかと同様、母親が佐々木本人に何かしらのことを言ったとしたら、引くかもしれない。
 ひょっとして、沢村から離れようとしたのはそれがあるのではないか。
 沢村は腕組みをしてそんなことを頭の中でああだこうだ考えていたのだが。
 


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