「ただし、佐々木さんのことは論外だ!」
また八木沼が佐々木の手を握りしめているシーンが舞い戻って、沢村は拳を握りしめる。
ぐるぐると考えて苛ついていると腹が減ってきて、冷蔵庫に入っていた弁当を取り出した。
自分が買ってきたもの以外に、稔が置いていった弁当もまだ入っていたので、それも取り出してレンジで温める。
リビングで二つ目を食べていると、寝室から佐々木が出てきてバスルームに入っていった。
「佐々木さん、大丈夫か」
トイレから出てきた佐々木に声をかけて、後について寝室に入った。
「多分、熱、下がった」
「シャツ変えた?」
「ああ、洗濯機に放り込んできた」
また毛布に潜り込む佐々木の体温を測ると、沢村は表示されている数字を見た。
「三十七度代。何か食べる? スープとかおかゆとかあるけど」
「うーん………おかゆ? レトルトなら自分で……」
「いいから寝てろ」
「お前、こないなとこで俺につきおうててええんか? 自主トレは?」
自分を気にかけてくれているのだろうがそんな佐々木にまた沢村はイラつく。
「休みだ」
「弁当とか、俺にあわせんかて、どっか食べいったらええやん」
「佐々木さんと一緒じゃねえと一人で食ってもうまくねえし」
「あほか…」
ストレートな言葉に佐々木は照れくさくて毛布をかぶった。
佐々木の熱は徐々に下がり、夜はスープやパンを食べられるようになった。
少し良くなって動けるようになると佐々木がバッグからパソコンを取り出して何かやろうとしているのを見て、沢村はパソコンを取り上げた。
「ダメ! 完全によくなってから」
「寝てるのもあきたし、んじゃ、風呂、入ろ」
「ちょとまて! あんた風邪ひいてるのに!」
バスルームに向かう佐々木を沢村は慌てて引き留める。
「熱下がったら、風呂入ったってええらしいで」
「手塚センセが言ったのか?」
「稔さんは熱あっても風呂入るやろ」
佐々木が風呂から上がってくると、沢村は映画のDVDがいくつか置いてあったので見ようと言い出した。
「アクションばっか、ってかダイハード全部」
沢村はウキウキと寝室のテレビセットにDVDをセットする。
「これ、手塚センセの?」
「いや、稔さん、最近は来てなかったみたいやし、院長先生やない? 稔さんのお母さん」
「へえ、いんじゃね、このチョイス」
沢村はベッドにクッションを持ってきて佐々木の横に入る。
「狭いわ」
「湯冷めしたらもともこもないだろ」
不意打ちのキスに、「風邪うつるやろ!」と佐々木は抗議するが、「俺免疫力強いからウイルスとか平気」と沢村はへらッと笑う。
何事もなかったかのように、沢村は佐々木を抱きかかえたまま、映画鑑賞で夜は更けていく。
佐々木と沢村が東京に戻ったのは日曜の昼過ぎだった。
土曜日はインスタントコーヒーしか入れたことのないような沢村が買ってきた乾麺のうどんを茹でると言い出し、茹で方を読みながらうどんと格闘しているのを見かねて、佐々木が手を貸そうとするが、沢村は頑として俺がやると言って聞かず、何とか茹でたものの麺が茹ですぎだったり、シーツを取り替えたり、洗濯して乾燥させた洗濯物を難しい顔で畳んでいる沢村の様子に佐々木は腕組みをして温かく見守るしかなかった。
夜には沢村がテイクアウトしてきた寿司を二人で食べながら、ダイハードを全て鑑賞しつくして、寄り添うように眠った。
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