好きだから5

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 それがここにきて、つまらないことでまた佐々木に距離をあけられてはかなわないと、すぐにも状況を説明したかったところなのだが、佐々木にとっても多忙な一年であり、残念ながらちょうどその頃、佐々木は代理店の藤堂とニューヨーク出張中だった。
 さらにその後、こうして佐々木にも内緒で弁護士に相談しなくてはならないことになってしまったことも沢村は心苦しいのだ。
「お前さ、もし相手がお前の言ったことをそのまま受け取ってマスコミがそれを流したらどうすんだ?」
 良太に言われなくても、沢村も全く考えなかったわけではない。
 高校時代から追い掛け回されたことからマスコミ嫌いで知られ、取材も受けたがらない、スポーツ関係の番組への出演も滅多に受けないことは業界でも有名な話だ。
 中には思い上がっているとか何様のつもりだ、などとこき下ろす者もいるが、何せ実力がものをいう世界である、何とか沢村への取材を取り付けようとマスコミも必死である。
 そんな沢村が唯一たまに出演しているのが良太がプロデューサーとして名を連ねているスポーツ情報番組『パワスポ』だ。
 沢村に対して歯に衣着せぬ物言いでで怒鳴りつけることができるのも、星川監督の他にはこの良太くらいだろう。
 子供の頃から地域の少年野球チーム同士、取っ組み合いの喧嘩をしたこともあるライバルだった。
 高校では片や甲子園の常連チームと片や三流の進学校、大学でもたまにリーグ戦で対戦したが、絶対信念を曲げない良太は打たれても打たれてもむきになって直球で向かってきた。
 嘘ばかりの家族の中で育ち、嫌気がさして高校卒業後に家を出た沢村にとって、良太は曇りのないピーカンの青空のような存在だった。
 プロに入ってからは互いに道が分かれたかと思われたが、スポーツ番組のプロデューサーと野球選手という形で再会し、以来、本音で言い合える数少ない相手だ。
「まあ、お前がどうこう言われてるのはどうでもいいさ。問題は佐々木さんだろ? そのこと佐々木さんにばれたら、お前今度こそ最後通牒かもしれないぞ」
 良太にそう脅されても沢村はぐうの音も出なかった。
 沢村が小田と奥のテーブルで話をしているうちに、青山プロダクション所属俳優である中川アスカがマネージャーの秋山を伴ってオフィスに現れた。
 オフィスはワンフロアで観葉植物くらいは置いてあるが仕切りもないので、何やら難しそうな顔で話をしているのが小田と沢村だとはすぐに知れた。
 アスカは窓際のソファに陣取って、二人をチラ見し、これは何かあるわね、とふんで良太を呼んだ。
「どうしちゃったの? 沢村、小田先生なんかと」
「まあ、ちょっと相談事があるみたいで」
「工藤さんは?」
「今日明日大阪です」
「ふーん、鬼のいぬ間に? 何企んでるの?」
 アスカの勘の良さは良太もわかっているので、「別に何も企んでませんよ」と良太はとっとと自分の席に戻る。

 


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