限りの月5

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「やっぱ地下鉄乗り継いでいくことにします」
「それがいいかも知れないわね。でも工藤さん、お疲れでしょうね。新幹線、早く動いてほしいわね」
 鈴木さんが言うように良太もそれが心配だった。
 動かなくて車中泊とか、ならないだろうな。
 そろそろ出るか、とパソコンの電源を落とした良太は、鈴木さんではないが、念のためにスニーカーもリュックに入れた。
 ベタ雪だと傘も必要だろう。
 食事をすることになっているし、雪がどの程度降るかわからないから、念のために、ちびたちには最近購入した自動餌やり器をセットしておいた。
 時間を設定しておけばカリカリが出てくるというシロモノだ。
 ナータンとチビ用に二台、にゃんたちのためならと結構痛い出費もなんのそのだ。
 できれば人の手でちゃんと接したいから、いざという時のためだが、この天候では鈴木さんに頼むこともできない。
「気を付けてね、行ってらっしゃい」
「鈴木さんも早めにオフィス閉めちゃってください」
 オフィスを出た良太は、乃木坂の駅に向かい階段を降りた。
 地下鉄に乗ってから携帯を見た良太は、新幹線が動き出したらしいというニュースを見て、ほっとした。
 だがまだのろのろ運転のようで、東京駅に着くのは早くても五時を過ぎるだろうと思われた。
 食事の約束は正直嬉しかった。
 ドイツから戻ってからも工藤はあちこち飛び回ってたし、恒例の青山プロダクション主催の忘年会にちょっと顔を出したものの、ここのところずっと京都の撮影で、良太もあまり顔を合わせていない。
 夕べは広告代理店プラグインのクリスマスパーティに良太も出向いたものの、いつもならいるはずのクリエイターの佐々木周平も顔を見せていなくて、佐々木のアシスタントの池山直子は何やら自棄になって酒をゴクゴク飲んだりしているし、良太もあまり楽しめなかった。
 というのも、佐々木と付き合っていたはずの良太の悪友が佐々木に三行半を突き付けられたと嘆いていたからだ。
 プロ野球関西タイガースの四番打者沢村智弘は良太とはリトルリーグの頃からの付き合いであり、ちょうど昨年のクリスマス辺りから佐々木と付き合い始め、それはもう佐々木にベタ惚れ状態だったのだ。
 また飲んだくれているんじゃないだろうなと、ちょっと悪友の心配をした良太は、昼頃になってから沢村の携帯を呼び出してみた。
「わりぃな、昨日から蓼科だ。佐々木さんと」
 それを聞いて他人事ながら良太も安堵した。
 何だよ、モトサヤかよ。
 ったくヤキモキさせてくれるぜ!
 ホッとした良太を乗せて六分ほどで、地下鉄は日比谷に着いた。
 改札をくぐると、良太は芝ビルへと地下通路を歩く。
「良太、お疲れさん」
 『やさか』は和菓子処で、テイクアウト以外にカフェも設置されている。
 青山プロダクションでその原作を映画化した推理小説家小林千雪の同級生、黒岩研二の店だ。
 正確には京都にある実家が本店、こちらは東京支店というところか。

 


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