「東洋商事の来年のCMキャラクターに、沢村選手を起用できないかと思うんだが」
「え……はい」
紫紀の申し出は意外ではない。
現に東洋商事だけではなく、沢村にCMのオファーがいくつか来ているのだ。
窓口はお前、などと沢村に勝手に決めつけられて、沢村のそういったオファーに関しては青山プロダクションが請け負うことになった。
というか、何故か良太がマネジメント担当ということになってしまっている。
「関西タイガースにCMオファーのアポを入れようと思ったら、そちらは青山プロダクションの広瀬さんが担当されていると言われてね、おや、と思ったんだよ。仲はいいとは聞いていたけどね」
紫紀は経緯を軽く説明した。
「はい、沢村の意向でそういうことになってしまいまして。お話は持ち帰りまして沢村に話してみます」
沢村が決めることだ、とりあえずそう言うしかないだろう。
「うちを優遇してほしいとかは言わないけどね」
紫紀はふっと笑う。
「沢村選手個人ともスポンサー契約を結びたいとも思っているんだ、実は」
「は、それは、沢村にもしっかり伝えます」
まさかまた、佐々木がやるんじゃなきゃいやだとかぬかすなよな、沢村のヤツ。
今度はそうは問屋が………。
「代理店も良太ちゃんに任せてしまっていいかな」
「は?」
まさか紫紀さん、沢村と佐々木さんのこと知ってるんじゃ………。
いや、いくら京助さんだって、そんなこと軽々しく言わないだろうし。
紫紀の弟の京助は法医学者で、難事件を解決したことで知られる推理作家の小林千雪と巷では何かあるとセットで噂をまき散らしている。
あれ、そういえば、藤堂さんと佐々木さん、確か、東洋グループ傘下の東洋不動産の仕事でてこずってたんだっけ。
あれってどうなったんだろう。
いや、ここで俺が聞くわけにはいかないし。
「実は、レッドデータで使われたCMはとても評判がいいし、ここのところ、東洋グループ系列でプラグインさんと佐々木さんが組んだプロジェクトが続いていて、傘下の東洋不動産のCM、これもなかなかよくてね」
え、それじゃ、OKだったってことか。
「しかも例のアディノの沢村選手のCMも藤堂佐々木組が担当したって聞いてね」
「はい、アディノのCMはクライアントにとっても沢村選手にとってもいい仕事になったようです」
「だよね。いや、佐々木さんがうちのお隣さんで、お茶のお師匠さんの若先生だからって、こっちの仕事を任せるとかじゃないけどね、実際佐々木氏は稀代のクリエイターとして業界でも一目も二目も置かれている方だし、来年もぜひお願いできれば有難いと思ってね」
「はい、それは、佐々木氏にも打診してみますが」
今年の佐々木さんのスケジュール、メチャタイトになったって、直ちゃん怒りまくってたし、来年ってどうなってるんだろう。
良太は佐々木のスケジュールも確認しなくてはと頭にメモる。
「いや、実は小夜子が去年と今年続けて佐々木氏と仕事してるじゃない? だからうちもぜひってね」
紫紀はお茶目な口調で肩を竦めた。
いや、造作は京助とよく似ているのだろうが、どうしてこうも雰囲気が違うんだろう。
唯我独尊的な京助とは打って変わって穏やかに見える紫紀を良太はあらためて眺めた。
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