「大和屋さんのお仕事は、佐々木氏が独立して最初のオファーでしたから、佐々木氏も力が入ったみたいですよ。それに茶の湯も関わっていますし、師匠の息子である佐々木氏自身が参加されたことがかなり評判を呼びました」
「確かに。下手なモデルさん使うより佐々木さんで正解。佐々木さんにはご足労をおかけすることになってしまったが」
あれは確か千雪さんから小夜子さんの実家の老舗呉服問屋大和屋の展示会とそれに付随するイベントの広告プロジェクトを受けてくれる代理店を探していると相談を受けて、プラグインの藤堂さんに話したら、浩輔さん経由で佐々木氏に白羽の矢が立った、という状況だったか。
巡り巡って、沢村と佐々木さんが出会うきっかけになったらしいのだが。
何にせよ、紫紀さんがこれだけ圧をかけてくるということは、CM、かなり本気だということだよな。
紫紀さんって、言葉は柔らかいけど、絶対やってね、みたいなところがあるから怖い。
「年明けにはお返事できるかと思います」
「いい返事をお待ちしてます」
これだよ。
もう受けるしかないって感じじゃん。
まあ、佐々木さんさえOKしてくれれば、沢村はやると思うけど。
うーん、どっちかがNOだと、実現不可、だよな。
そんなことを考えながら東洋商事のビルを出た途端、良太は思わず、うわ、と声に出した。
いつの間にか大粒の雪が降り注ぎ、通りは真っ白になっていた。
これはヤバいと一旦ビルに引き返し、端の方にあるテーブルセットを陣取って靴をスニーカーに履き替えた。
革靴をリュックに入れると良太は再びビルを出る。
水気を多く含んだ重い雪は、地面に落ちては消えしていたのだが、そのうちそれも少しずつ積もり初めた。
時刻は五時になるところで、工藤との約束は六時だからまだ一時間はある。
それもはっきりしたことは新幹線が近くまで来ないとわからない。
「コーヒーでも飲んで待ってよ」
和食処『井筒』は携帯で調べて丸の内テラスの近くだとはわかった。
昨日のイブほどじゃなくても今日なんて店、入れるのか?
工藤、予約とかしたんだろうか。
良太は丸の内テラスに入っているコーヒーショップで工藤を待つことにした。
コーヒーを口に持って行こうとした時、携帯が鳴った。
「はい、六時くらいには東京駅着くんですね。俺、丸の内テラスのコーヒーショップにいます。あの、それから……」
雪が結構降ってるからと続けようとした時は既に携帯は切れていた。
「ったく、あのオヤジは!」
まあ、車内でもそういう情報は入るだろう。
間もなく新横浜だというから、工藤の乗った新幹線は何とか無事に東京に着くはずだ。
だがおそらくこの雪だと、あとの新幹線はアウトかも。
雪は止む様子もなく華やかなイルミネーションに降り注いでいた。
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