肇とは互いの都合をつけて是が非でも年内に会おうということになった。
それに、かおりも良太に会いたいと言っているらしい。
「美人には美人だったよな、口はやかましかったけど」
良太の高校は公立のそこそこの進学校だったから、良太がエースという野球部の成績もそこそこ。
何とか甲子園にまでこぎつけたことが過去一、二度あったらしいが、それもかなり古い話だ。
とはいえ先輩たちも厳しかったし、部員もみんな一生懸命野球に青春を燃やしていた。
そんな野球部員たちのマドンナがマネージャーのかおりだった。
見てくれ実力ともにカッコよかった主将とつき合っているという噂もあったが、主将が卒業したあと、まさか良太とつきあうとは、周りのみんなも思いもよらなかったようだ。
「かおりちゃんが編んでくれたセーター、まだあったかな~」
彼女の好きなアイドルグループのCDを妹の亜弓に一緒に選んでもらったこともあったな。
良太は音楽関係まったく疎かったからだ。
そんな高校二年のクリスマスイブ、映画を見てからプレゼントを交換したのはファミレスだったっけ。
でもキスしたことも覚えてるし…
思い出して良太はちょっと頬を赤らめる。
「良太はウブくてかまいがいがありそうだからな、かおりちゃん世話好きだし」
負け惜しみ半分に肇に茶化された。
今考えるとまるでガキだった。
ひょっとして良太がガキだったから、続かなかったのかもしれない。
大学時代はそれなりに遊んだこともあるが、どちらかというとT大という名前に寄ってきた経験豊富なお姉さまに遊ばれたというのが正しい。
T大のエースなんぞと呼ばれて、ひととき浮かれていた良太だが、それでもリトルリーグの頃からのライバルなんかもいて、中学、高校、大学と、まるでシナリオでもあるかのように、よく対戦した。
こいつだけには負けるものかと、最大のライバルと思って熱くなっていたものだが、一足先に卒業したK大の沢村智弘といえば、いまや押しも押されもせぬレッドスターズの看板スラッガーだ。
おそらく自分のことなどもう覚えてもいないだろう沢村と自分とを比べてみれば仕事も人生もまるで別世界だ。
といって何を悔やんでいるわけでもない。
「でもな~……」
きっと、工藤からするとやっぱガキなんだろうな~
ぱたと炬燵に突っ伏して、ちょっと拗ねてみる。
どうせ、工藤みたく仕事もできないし、激愛っつうか、大人の恋愛とはてんで程遠いよ、俺は。
どうしてもそこから先の思考は、最近ワンパターンになりがちだ。
何しろ、鴻池の屋敷に連れて行かれた時は、またしても危ないところでどっかのアニメの名探偵みたくあの人が颯爽と現れてカッコよく決めてくださったし。
でも、あの人、小林千雪のことを考えると、やはり心穏やかならざるものがある。
小林千雪、世間ではダサくてネクラな推理作家として知られるが、その実、類稀なる美貌の持ち主であり、高校まで女の子に追いかけまわされたことにウンザリして、上京して以来ダサ男で大学デビューしたという変わり種だ。
その小説を工藤が映画化して評判を呼び、作品はドラマ化もされている。
そして、かつて小林は工藤と関わりがあったという。
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