バレンタインデーは冬晴れ。
前日から風が強くて、ひどく寒かった。
朝、起きた時から寒気がして、喉が少し痛い。
夕べ、無理して数学の問題集をやり終えたのがいけなかったのかも。
微熱もありそうだとは思ったが、今日は休みたくない。
くれる人がいたら申し訳ないが、チョコレートが目当てではない。
欲しいのは、ただ一人の人からだから。
…………それは叶いそうもないし。
ただ、今日は必ず、幸也は学校に来るだろうから。
風に飛ばされそうになるマフラーを巻きなおして、勝浩は学園の門をくぐろうとしたところで、女の子たち数人からチョコレート攻めを受ける。
「ありがとう」
営業スマイルは志央のようで嫌だったが、気持ちだけは嬉しい。
教室に着くと、既に机の上はチョコレートの山だ。
俺って、こんなにもてたっけ?
思うそばから、西本の話を思い出してげんなりする。
うわー、ひょっとしてこれ、ヤロウからのチョコだったりして。
中を見るのが怖いぞ。
後ろを見ると、最後列の七海の机の上にも、今にも雪崩れてきそうなチョコレートのラッピング。